COLUMN|視覚障害者と表現するよろこびを探究する!デザインリサーチ解説

PLAYWORKS株式会社は文具メーカー ぺんてる株式会社 と、「視覚障害者と表現するよろこびを探究する!」をテーマとした、インクルーシブデザイン・プロジェクトを進行中です。
本記事は UXリサーチ/デザインリサーチ Advent Calendar 2022 の連携記事として、「Pentel:INCLUSIVE DESIGN PROJECT」において実施した、デザインリサーチをご紹介します!

リードユーザーとデザインプロセス

2021年8月にスタートしたプロジェクトは10名の視覚障害リードユーザーと共創しながら、約1年の活動の中で[ RESEARCH ][ IDEATION ][ PROTOTYPING ]を反復し、4つのテーマと8つのプロトタイプにたどり着きました。

ご協力いただいた視覚障害リードユーザーのみなさん。以下顔写真:オオサワさん、カタヒラさん、カワブチさん、サトウさん、シキシマさん、タカギさん、ハセベさん、ハラマキさん、ヒナタさん、マエダさん。
Research、Ideation、Prottypingの3段階に分かれた取り組みのフローチャート。

詳しくは、これまでの活動をまとめたダイジェストムービーをご覧ください。

Pentel:INCLUSIVE DESIGN PROJECT 視覚障害者と表現するよろこびを探究する!(2021/10)

Pentel:INCLUSIVE DESIGN PROJECT 視覚障害者と表現するよろこびを探究する!(2022/10)

4つのテーマと8つのプロトタイプ

視覚障害者と表現するよろこびを探究する4つのテーマは、[ ACCESSIBILITY ][ HAPTICS ][ LOW VISION ][ COMMUNICATION ]。これらのテーマにもとづき、8つのプロトタイプを制作しました。

4つのテーマ。"Accessibility" 視覚障害者が使いやすい素材とは? "Haptics" 触覚によって拡張する表現とは? "Low vision"「見えにくい」から生まれる表現とは?  "Communication" 見える・見えないをつなぐには?
紙と絵の具でプロトタイプを作成している参加者のようす

デザインリサーチ一覧

これまでのプロセスの中で実施した、デザインリサーチは以下です。(実施順)

  • グループインタビュー(オンライン・視覚障害者 5名)
  • 製品体験(郵送・視覚障害者 5名)
  • アンケート(Web・視覚障害者 136名)
  • 共創ワークショップ(オンライン・ぺんてる + 視覚障害者 5名)
  • ヴィジョンデザイン(オンライン・ぺんてる + 視覚障害者 3名)
  • デプスインタビュー(オンライン・視覚障害者 3名)
  • 当事者体験(リアル・ぺんてる 視覚障害メガネ着用)
  • シーン観察・インタビュー(リアル・視覚障害者 4名)
  • デスクリサーチ(ぺんてる)
  • プロトタイピング①(参考製品)
  • プロトタイピング②(制作)
  • ユーザーテスト①(リアル・視覚障害者 3名)
  • プロトタイピング③(改良)
  • シーン観察・インタビュー(盲学校・視覚障害児 4名)
  • ユーザーテスト②(リアル・視覚障害者 3名)
  • ユーザーテスト③(リアル・視覚障害者 11名)

デザインリサーチ解説

実施したデザインリサーチの中から、いくつかピックアップしてご紹介します。

アンケート

視覚障害者を対象に「画材やペン・絵画表現に関するアンケート」をWEBで実施し、136名もの方にご回答いただきました。アンケートを通じて視覚障害者が絵を描くことへの実態や、困っていること、工夫していること、理想の画材など、現状の把握を行いました。

アンケート結果のグラフ。「日常的に絵を描く機会は?」まったく描かない51%「日常的にもっと絵を描きたいと思いますか?」描きたいと思う(とても・少し)59%。アンケートはSNSや視覚障害者コミュニティを通じて協力依頼。設問にて今後の協力意向を確認。アンケート結果はぺんてる社内への共有や、HPなどで公開した

ヴィジョンデザイン

ぺんてるのプロジェクトメンバーと視覚障害リードユーザーで、「これからはじまるプロジェクトについてどう思っているのか?」「プロジェクトを通じてどんなことを実現したいのか?」などを、対話を通じて探索していきました。

視覚障害リードユーザーを含めたメンバー全員で「プロジェクトを通じて実現した未来」について対話し、ひとりひとりが発表(宣言)することで、プロジェクトの自分事化を進めた。宣言の例:「視覚以外の感覚で描くコトと描かれたモノを楽しみ様々な立場の人が共感し合えるコトを考える」「目が見えないから描けない、目が見えるから描ける、を変える」

デプスインタビュー

アンケートに回答いただいた視覚障害者の中から、特にエクストリームな方を選定させていただき、オンラインにてインタビューを実施。オンライン越しでありながらも、実際に使われている画材や使用シーンを見せていただき、現状の課題感や要望を把握していきました。

アンケート回答者の中からエクストリームユーザー(3名)を選定し、インタビューを実施。当事者の生の声を聞くことで、共感を深めた。Zoom録画をYouTubeに限定公開した。

シーン観察・インタビュー

コロナの状況を見ながら4名の視覚障害者にオフィスに来社いただき、実際に画材を使用している様子を観察。全盲グループ・弱視グループに分けることで、見えにくさの違いによる課題感や要望を把握し、インタビューからアイデアのタネを探っていきました。

視覚障害者が実際に画材を使用する様子を観察し、共感・課題把握を深めたZoom録画をYouTubeに限定公開した。

当事者体験

ぺんてるメンバーはアイマスクやロービジョンをメガネを着け、さまざまな画材を体験。視覚障害を疑似体験することで、課題感をより自分事化していきました。

画材体験ワークショップ。アイマスクやロービジョンメガネで当事者体験をおこない、自分事化・会社事化を深めた。ワークショップは見学可とし、関連部署やキーマンを誘って巻き込んでいった

シーン観察・インタビュー

盲学校にうかがい、図工の授業を見学。子どもと大人の違いの把握や、「音」に合わせたり、「道具」を使うなど、新たな表現具の可能性を探究しました。

視覚特別支援学校での授業見学やインタビューの様子。視覚障害児と触れ合うことで、より自分事化・会社事化を深めた。盲学校との連携によって、当事者との新たな接点が生まれた。

プロトタイピング①

考案した100案を絞り込むために、アイデアを疑似体験できる参考製品を持ち寄り、体験・対話からアイデアの方向性を絞り込んだ。自らプロトタイプを制作する必要がないため、時間を掛けずにアイデアの評価をおこなうことができた。

アイデア選抜ワークショップ。アイデアを疑似体験できる参考製品を持ち寄り、体験・対話する事でアイデアの方向性を絞った。ワークショップは見学可とし、関連部署やキーマンを誘って巻き込んでいった。

ユーザーテスト

制作したプロトタイプは都度、視覚障害者に体験いただき、フィードバックをもとに改良を行っていった。障害に関わらず、絵を描くことの好き嫌いや、その人の個性もアイデアの評価に影響してくるため、計14名の多様な視覚障害者にご協力いただきました。

担当アイデアを決め、各自がプロトタイプを制作。視覚障害者に体験してもらい価値検証をおこなった。当事者からのポジティブなフィードバックが、モチベーションにつながっていった。

プロジェクトの今後にご期待ください

「Pentel:INCLUSIVE DESIGN PROJECT 視覚障害者と表現するよろこびを探究する!」は、引き続き製品化を目指して活動をしています。ぜひ今後の展開にご期待ください!

また、障害者との共創から新たな価値を創出する「インクルーシブデザイン」にチャレンジしたい方は、お気軽に PLAYWORKS までご連絡ください!

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