INTERVIEW|PLAYWORKS認定リードユーザー 1期生 インタビュー

PLAYWORKS株式会社は、障害のある大学生を対象とした「認定リードユーザー育成プログラム」を提供開始。1期生として3名のPLAYWORKS認定リードユーザーが誕生しました。
数々のインクルーシブデザイン・プロジェクトに参画してきた先輩リードユーザーの中川が、1期生3名に「認定リードユーザー育成プログラム」に参加した経緯や感想、リードユーザーとしての活動について話を聞きました。今後、リードユーザーとしての活躍が期待される、障害のある大学生のリアルな声をお届けします。
PLAYWORKS「認定リードユーザー育成プログラム」とは?
PLAYWORKS株式会社は、障害者など多様なリードユーザーとの共創からイノベーションを創出する、インクルーシブデザイン・コンサルティングファームです。大手企業のインクルーシブデザイン・プロジェクトの伴走支援や、視覚障害者歩行テープ「ココテープ」「ロービジョン体験キット」「指差しコミュニケーションパンフレット」などの自社プロダクトを、リードユーザーとの共創でて生み出してきました。
インクルーシブデザインとは、障害者や高齢者などこれまでサービスや製品のメインターゲットから排除されてきた人々を、リードユーザーとしてプロジェクトにアサインし、ともに活動していくデザイン手法です。PLAYWORKSではリードユーザーを「未知の未来に導いてくれる人」と定義し、彼らとの共創によって新たな価値の創出します。
そして、インクルーシブデザインの成功のカギは、テーマとリードユーザーのマッチングです。PLAYWORKS「認定リードユーザー育成プログラム」は、インクルーシブデザインのプロジェクトにおいて活躍できるリードユーザーの育成・コミュニティ化を目的とした、全3回のオンラインプログラム。受講生はインクルーシブデザインの理論と実践を学び、修了後は企業のインクルーシブデザイン・プロジェクトにアサインされ、活躍の場が提供されます。

PLAYWORKS認定リードユーザー1期生 インタビュー
今回のインタビューは、PLAYWORKSでリードユーザーとして活躍する中川テルヒロが実施。1期生のる末棟武虎・川本一輝・山宮叶子に、同じ視覚障害当事者として、また先輩リードユーザーとして率直に話を聞きました。
末棟 武虎 SUEMUNE TAKETORA

「リードユーザーの意義」と「モノづくりの面白さ」を実感した
筑波技術大学 保健科学部 保健学科 鍼灸学専攻 3年。全盲で右目にわずかに光覚がある。あん摩マッサージ指圧師・鍼灸師の国家資格取得を目指して勉学に励んでいる。音楽鑑賞と野球観戦が趣味。
Q. リードユーザー育成プログラムに参加したきっかけは?
リードユーザー育成プログラムの構想段階から参加させてもらいました。以前からPLAYWORKSのプロジェクトで、リードユーザーとして活動していましたが、今後さらにレベルアップしたいという思いから、リードユーザー育成プログラムの1期生として参加させていただきました。
Q. リードユーザー育成プログラムを通じて学んだこと、成長したことは?
プログラムを通じてリードユーザーとはどんな存在なのか、その根本にあるインクルーシブデザインの考え方について、理解することができました。
また、伝わりやすい言葉を選んでコミュニケーションを取ることの大切さを学びましたね。企業とのプロジェクトでは、僕自身の伝え方がわかりづらいと、視覚障害者の見え方や感覚が正しく理解されないまま話が進んでしまうので、自分の言葉でわかりやすく伝えることの重要性を学びました。
Q. リードユーザーの活動で、印象的な出来事やエピソードを教えてください。
高島屋さんとのインクルーシブファッションのプロジェクトが印象に残っています。このプロジェクトでは1年に渡ってリードユーザーとして参加して、製品化されたTシャツや店舗のデザインなどに自分の声を反映いただきました。
見えづらさがある中でファッションのどんな所にこだわっているのか、購入や着用の体験についてワークショップを通じて伝えることができました。
企業の製品開発において、リサーチからアイデア発想、試作品へのフィードバック、販売員研修、ポップアップでの販売まで、一連のプロセスをリードユーザーとして参加できたのは、本当に貴重な経験でした。

Q. リードユーザーは企業や社会にどんな価値を提供できると思いますか?
もっと企業のプロジェクトにリードユーザーが関わっていくことで、移動やセルフレジなど障害者にとっての日常生活の困りごとが、少しずつ解決されていき、より多くの人にとって暮らしやすい社会になると思っています。
企業の方も障害者を相手に構えすぎず、アットホームにパートナーとして接していただけると、お互いにとって良い気づきやアイデアが生まれるはずです。
Q. 今後、どのようなプロジェクトに関わりたいですか?
野球が好きなので、スポーツ関係のプロジェクトには積極的に参加したいです。今回、参加した高島屋さんのプロジェクトのように、今後も「試作して、フィードバックして、またアップデートして…」といったモノづくりのプロセスに携われたら嬉しいです。
Q. あなたにとって「リードユーザー」とは?
リードユーザーは「与えられたものを、他の人にも伝えていく存在」だと思っています。障害のある自分が得た経験や知識をそのままにせず、積極的に発信し、気づきやきっかけを与える、本当の意味で社会をリードしていく役割だと思っています。
Q. 最後に、障害のある学生にメッセージをお願いします。
少しでも興味があれば、まずは1回挑戦してみてほしいです。僕はこのプログラムを通じて、インクルーシブデザインやリードユーザーに対する考え方や価値観が大きくレベルアップしました。仕事でも人生でも活かせる経験になるはずです!
川本 一輝 KAWAMOTO KAZUKI

育成プログラムを通じて「対話と共創」の重要性を再確認した
徳島県出身。幼少期から弱視で、12歳の時に全盲となる。公立小学校の支援学級に通い、中学からは視覚支援学校へ。高校は東京の筑波大学附属視覚特別支援学校に進学。現在は国立筑波技術大学の3年生。2024年11月に合同会社WillShineを起業し、2025年3月「TOKYO SUTEAM DEMO DAY 2025」でTOKYO SUTEAM賞を受賞。
Q. リードユーザー育成プログラムに参加したきっかけは?
以前よりPLAYWORKSのプロジェクトにリードユーザーとして関わらせてもらっていましたが、改めて代表のタキザワさんから声をかけてもらいました。
僕と同じような背景や障害を持った学生が成長していける、とてもいい取り組みだなと思い、リードユーザー育成プログラムへの参加を決意しました。
Q. リードユーザー育成プログラムを通じて学んだこと、成長したことは?
まず、「インクルーシブデザイン」という概念やデザイン手法に対する理解が深まりました。これまでユニバーサルデザインやバリアフリー、アクセシビリティなどさまざまな取り組みがある中、その違いが自分の中でうまく整理できていなかったんです。
今回のプログラムを通じてインクルーシブデザインは、プロダクトを作る過程に当事者である私たちがリードユーザーとして入り、企業のメンバーと共創しながらアイデアを形にしていくプロセスであることを改めて理解できました。
今、社会でも対話や共創が重要だといわれていますが、実際に実現するのは難しいと感じていました。インクルーシブデザインには、そんな対話や共創への価値観が根底にあることを知れたのは大きな収穫でした。
また、プログラムでのさまざまなワークを通じて、他の受講生とのやりとりがとても勉強になりました。僕はまだリードユーザーとしての経験はそれほど多くないので、他の受講生の体験談を聞く機会を得られたのは嬉しかったですね。
Q. リードユーザーの活動で、印象的な出来事やエピソードを教えてください。
大手家電メーカーとのヘッドフォン・イヤホンをテーマにした、アクセシビリティに関するプロジェクトが特に印象にのこっています。製品の開封・初期設定、実生活での使用までの一通りを体験した上で、フィードバックをするという全3回のプログラムでした。
これまでもユーザビリティ改善のフィードバックの被験者として呼ばれたことはありますが、基本的には担当者の方がメモを取りながら話を聞いて2時間で終わりということが多いんです。このプロジェクトでは3回のプログラムがしっかりとデザインされていて、特に1日目にグループのメンバーで、一緒に外にお昼を食べにいく体験がとても良かったですね。
単に被験者として呼ばれているのではなく、一緒にプロジェクトを進めていく仲間として関わっていることを実感しました。お昼の時間や移動中に製品のことだけではなく、大学の話や「普段、歩く時は何を気をつけている?」といった日常的な話もできたおかげで、お互いの理解も深まり、距離感も縮まったと思います。
こうした交流があったからこそ、2日目に実際に製品を使っているときに、困りごとを自然と共有することができたんです。
相互理解ができる時間があることで、当事者リードユーザーとしての関わり方や深みが変わってくるのだと、気づかされました。

Q. リードユーザーは企業や社会にどんな価値を提供できると思いますか?
特定の製品についてだけでなく、日常生活を通じた新たな視点を提供できると思います。製品を改善するという枠にとらわれ過ぎずに、障害という特有な状態があることで、企業の開発者やデザイナーが気づかない使い方や工夫、アイデアを示すことができると思うんですよね。
企業の皆さんには、障害のある人を単に被験者として見るのではなく、一緒に食事をしてみるなど、人と人とのコミュニケーションを取り、仲間として関わってもらうことで、製品を改善する以上の価値が見えてくるはずです。
Q. 今後、どのようなプロジェクトに関わりたいですか?
デジタルDXやシステム関係、教育分野への関心が強いですね。また、趣味の音楽やスポーツ関連のプロジェクトにも呼んでいただけたら嬉しいです。
Q. あなたにとって「リードユーザー」とは?
リードユーザーとは、インクルーシブデザインのプロジェクトに伴走する、障害と他分野の知識を併せ持ったプロフェッショナルです。
単なる被験者ではなく、自分の状態や障害全体を広い視野で捉えて説明でき、製品開発を一緒に行う真の共創パートナーでありたいです。
Q. 最後に、障害のある学生にメッセージをお願いします。
「自分にできるかな?」「うまく喋れないかも…」と思うかもしれませんが、それは自分だけの評価で、実際は社会で大きな需要がある可能性があります。少しでも興味を持ったら、ぜひ申し込んでみてください!
山宮 叶子 YAMAMIYA KAKO

育成プログラムを通じて「自分らしさ」を発見した
学習院女子大学 国際文化交流学部 2年。先天性の全盲。大学では英語を専攻し、教職課程を履修中。読書、コスメ・ファッション、風景写真の撮影、美術館巡りを楽しむ。ボランティア活動にも関心があり、教育・福祉・国際関係の分野で経験を積んできた。8月初旬からカナダに半年間留学中。将来は英語教師を目指している。
Q. リードユーザー育成プログラムに参加したきっかけは?
もともとインクルーシブデザインの取り組みに興味がありました。代表のタキザワさんにお声がけをいただいたのをきっかけに、視覚障害がある自分だからこそできることについて考えたいと思い、リードユーザー育成プログラムへの参加を決めました。
Q. リードユーザー育成プログラムを通じて学んだこと、成長したことは?
他のリードユーザーと話す機会が少なかったので、どんなことを意識して活動しているのかを聞けて、たくさん自分に取り入れることができました。
特に印象に残ったのは、一緒にプログラムを受講した川本さん、末棟さんのデモンストレーションです。川本さんは時間配分が上手でコミュニケーションもスムーズ、末棟さんは「全部で9個あるうち、3個が」といったように、数字や分類を使って具体的にイメージしやすい説明をされていました。
また、私は視覚障害という世界の中の1人であって、他にもいろいろな当事者がいることを忘れずにお話しすることが大事だと自覚できました。
Q. リードユーザーの活動で、印象的な出来事やエピソードを教えてください。
大手家電メーカーとのプロジェクトがとても印象的でした。3日間、グループの社員さんたちとお話しながら製品を使い、フィードバックするという貴重な経験をすることができたんです。
新しい製品をゼロから使うことにワクワクしましたし、お昼を一緒に食べながら普段の生活についても話すことができて、和やかな雰囲気でお互いを理解することができたと思います。
また、そんなちょっとした雑談をきっかけに「もしかしたら、こんな製品があればもっと生活が豊かになるかもしれないね」といった自然にアイデアが自然に生まれてきたのも面白かったです。

Q. リードユーザーは企業や社会にどんな価値を提供できると思いますか?
プロジェクトを通じて、実際に当事者に会って話すこと、協働作業をすることで、インターネットでは得られないような、生の声や実感が伝わることが大きな価値だと思っています。
よりリアルな意見を取り入れることが、これまでにないより良い製品づくりにつながるはずです。リードユーザーが社会に広がっていくことで、さまざまな背景を持った人たちが自信を持って声を上げ、より良いモノが生まれていくサイクルをつくっていきたいですね。
Q. 今後、どのようなプロジェクトに関わりたいですか?
ファッションやメイクが好きなので、そういった分野のプロジェクトがあれば、ぜひご協力させていただきたいです!
Q. あなたにとって「リードユーザー」とは?
自分らしくいられる役割の1つです。私は小さい頃から「自分だからこそできること」への強い想いがありました。人と違うことがしたいという気持ちも強いタイプでした。
リードユーザーは、自分の本当の強みや経験を生かし、自分にしかできないことを提供できる場所。自分らしさを存分に発揮できる、かけがえのない機会だと感じています。
Q. 最後に、障害のある学生にメッセージをお願いします。
「新しいことに挑戦したい」「いろんな背景のある人と関わりたい」「自分らしさを探求したい」という気持ちがあるなら、ぜひ参加してほしいです!
自分の経験をシェアすることで、私自身も自分がどういう人なのか、まだ知らなかった自分に気づくきっかけになりました。リードユーザー育成プログラムを経て、そんな新たな自分らしさを知ってもらえたら嬉しいです。
PLAYWORKS認定リードユーザー 説明会
PLAYWORKS株式会社はインクルーシブデザイン・アクセシビリティに関するプロジェクトに、リードユーザーとして参画したい視覚障害のある大学生を募集します。リードユーザーとしての活動にご興味ありましたら、説明会にご参加ください!
※現在は視覚障害のある大学生を対象としています。他の障害、成人については、今後の展開で検討してまいります。
説明会 申込フォーム
実施時期:2026年春頃を予定
場所 オンライン(Zoom)
対象者:視覚障害のある大学生
説明会に参加希望の方は、以下フォームよりお申し込みください。
https://forms.gle/tn83WTwY65ZXJunW9
本件に対するお問い合わせ・取材依頼は お問い合わせ よりご連絡ください。




