REPORT|PLAYWORKS × MIRAIRO Co-Designプロジェクト:コロナ在宅ワークショップ
2021年8月23日、PLAYWORKS株式会社と株式会社ミライロが「MIRAIRO Co-Designプロジェクト」体験ワークショップの2回目を開催しました。今回はこちらの体験レポートをお届けします!
PLAYWORKS × MIRAIRO Co-Designプロジェクトとは?
「MIRAIRO Co-Designプロジェクト」は、PLAYWORKSの「インクルーシブデザイン」「サービスデザイン」、ミライロの「ユニバーサルデザイン」の知見を活かし、企業における製品・サービスの開発や改善を支援するための取り組みです。このプロジェクトではミライロ・リサーチによる障害当事者への調査や、ワークショップへのリードユーザーとしての参加など、全体プロセスに障害当事者が関わりながら進めていきます。プロジェクトを通じて、バリア(障害)がバリュー(価値)となる社会の実現を目指していきます。
PLAYWORKS株式会社
新規事業・組織開発・人材育成など、企業が抱えるさまざまな問題を解決へと導きます。また 一般社団法人PLAYERSでは、新感覚ダイアログワークショップ「視覚障害者からの問いかけ」や、テクノロジーで点字ブロックをアップデートする「VIBLO」、顔が見える筆談アプリ「WriteWith」の社会実装など、社会課題の解決に取り組んでいます。
https://playworks-inclusivedesign.com/
株式会社ミライロ
障害のある当事者の視点を活かし、ユニバーサルデザインの総合コンサルティングを推進しています。社会性と経済性の両輪から、3つのバリア「環境」「意識」「情報」や社会の仕組みに関する各種ソリューションを提供。多様性を理解する「ユニバーサルマナー検定」、障害者手帳アプリ「ミライロID」、障害当事者の声をHP、製品、施設改善に活かす「ミライロ・リサーチ」、D&Iの情報発信・交流拠点「ミライロハウス」などを展開しています。
「オンライン体験ワークショップ」スタート!
今回は「コロナ在宅」をテーマに障害当事者4名と、私たちの暮らしをより豊かにしてくれるメーカー企業4社の計16名が参加。3時間のオンラインワークショップを行いました。はじめに「Co-Designプロジェクト」の説明や参加企業紹介があった後、ワークショップの目的やテーマ、プログラムが伝えられました。
障害当事者は視覚障害者、聴覚障害者、上肢障害者、下肢障害者(車椅子ユーザー)が1名ずつ。参加企業はぺんてる株式会社、ダイキン工業株式会社、株式会社セガ、カシオ計算機株式会社です。さまざまな障害者、企業参加者が入り混じったグループで、文房具、空調、ゲーム、楽器をテーマに4回のディスカッションを行っていきました。
ワークショップでは聴覚障害者への情報保障として、スマホアプリ UDトーク を使用します。スマホに向かって話すと音声を認識し、文章として画面に表示されます。そのため、耳が聴こえない人でも目で内容を理解する手助けになります。今回は、UDトークを初めて使う方が多かったため、UDトークのルームに全員が入れているかを確認してから、ディスカッションを開始しました。
プログラム
● UDトーク設定&体験
● ディスカッション①:文房具
● ディスカッション②:空調
● ディスカッション③:ゲーム
● ディスカッション④:楽器演奏
● グラフィックレコーディングの共有
(各ディスカッション前に事前アンケート結果の共有)
ここからは、ディスカッションの内容をグラフィックレコーディングとともに振り返っていきたいと思います。
ディスカッション①:文房具
視覚障害者で生まれつき全盲のハラグチさんは、普段は文房具は使わずに、点字やパソコンの音声読み上げソフトを使用してメモを取っているとのことでした。祖母から物の色を教えてもらったことから、色のイメージはあるそうです。
次に、先天性の聴覚障害のあるタナカさんは「ブギーボード」と呼ばれる電子メモパッドを持ち歩いており、メモ用紙と併用してコミュニケーションの仕方によって使い分けているとのことでした。
続いて、上肢障害で腕と指が欠損しているシライシさんは、紙を押さえることに困難さを感じていました。また、タナカさん同様にブギーボードに便利さを感じていますが、個人情報の記入を人に頼まなければいけないことに、躊躇いを感じられていました。
最後に、下肢障害者で車椅子ユーザーのタケコシさんはもともと文房具が大好きで、今はネットで購入できて便利ではあるものの、店舗に行かないと試し書きができない、試し書きをしようとしても台に届かない、などのデメリットを挙げられていました。
ディスカッション②:空調
空調について視覚障害者のハラグチさんは、暖房と冷房のボタンがエアコンによって違うために切り替えが難しく、音声ガイドのついたエアコンだと便利とのことでした。実際にiPhoneのVoiceOver(音声読上げ機能)を体験したカシオ計算機とセガの参加者は、読み上げスピードに驚かれていました。
次に、聴覚障害のあるタナカさんは自宅で空調を使うことはなく、普段はうちわやオイルヒーターで体温調整をしているそうです。その背景としては家電量販店でエアコンを購入しようとした時に、筆談に応じてもらえなかった経験があるそうです。
続いて、上肢障害のあるシライシさんは服のボタンの開け閉めの困難さから、服装による寒暖差への対応がしにくいとのことでした。逆に、足は薬を拾えるほど器用だそうです。空調については、自動で体温に合う設定にしてくれる機能を求められていました。
最後に、下肢障害者のタケコシさんは骨形成不全症という病気の影響で暑がりであり、真冬でも暑く感じるそうです。実際にダイキンの空調を使っているものの、旦那さんとの体感温度に差があり、首に冷たいタオルを巻くなどの工夫をされていました。
ディスカッション③:ゲーム
視覚障害者のハラグチさんは、「見えるか見えないかではなく、どうすればゲームをプレイできるか?」を考えながら遊んでいるそうです。最近のゲームは空間認識がしやすかったり、振動があることで、見えるかどうかは関係なく遊べて楽しいそうです。
次に、聴覚障害のあるタナカさんはパズルやRPGなど、1人だけでプレイできるゲームでよく遊ぶとのことでした。特にパズルゲームはじっくりと考えられるところが好きだが、音がないため単調で飽きやすいそうです。逆に、人と話す要素のあるオンラインゲームや、聞こえないことがハンデとなるカルタなどは嫌とのことでした。
続いて、上肢障害のあるシライシさんは「Nintendo Switch」を足と手で操作して遊んでいるそうです。しかし、スマホゲームの指1本で操作できる操作性に楽しさを感じており、ソフト面だけでなくハード面での使いやすさに改良の余地がある、という意見交換がされました。
最後に、下肢障害者のタケコシさんは家族で「フォートナイト」を遊ばれています。骨形成不全症という骨の病気のため、バイブレーションが骨に響くことを避けたく、設定をオフにしているそうです。オンラインで繋がることに初めは不安もありましたが、障害で実際には走り回れない代わりに、ゲームの中で走り回れることに自由さを感じているようでした。
ディスカッション④:楽器演奏
視覚障害者のハラグチさんは幼い頃、お姉さんの通うピアノ教室で耳で覚えてピアノを弾いていたそうです。周囲の視覚障害者にも楽器を弾いたり、音楽関係の仕事に就いている人が多く、視覚障害者は音楽好きが多いのではないか、とのことでした。ボタン操作ができれば、目が見えなくてもシンセサイザーでの作曲も可能ではないかとのことです。
次に、聴覚障害のあるタナカさんは学生時代バンドに憧れ、先輩からリズム楽器ならやりやすいとベースを勧められ、バンドを組んでベーシストとして活動されていました。音が聞こえないため、直接体に振動が響くロックのドラム音が好きで、音楽は音階だけじゃない楽しみ方もある、音楽はみんなが楽しめるものと信じている、と教えてくれました。
続いて、上肢障害のあるシライシさんはサックスに憧れがあったものの、自身の身体に合わせて改造すると莫大な費用が掛かってしまうため、諦めた経験があるそうです。しかしながら「超福祉展」でアプリで演奏できる楽器を見たことがあり、そちらを検討しているとのことでした。
最後に、下肢障害者のタケコシさんはキーボードを9年習っており、ドラムをやっている息子さんとコロナ禍でも家庭内でセッションしたり、オンラインでレッスンを受けたりなど音楽を楽しまれていました。しかし、ピアノはタッチが重く、骨の病気で長時間演奏するのは大変とのことでした。
最後に、株式会社ミライロからお知らせがあり、大盛況の内に「MIRAIRO Co-Designプロジェクト:コロナ在宅」体験ワークショップは終了しました。
参加者の感想コメントをご紹介したいと思います。
● 普段考えない視点でサービスや商品を考える良いトレーニングになりました。対話の中で、障害者の方々と相互に気付きがある所も、インクルーシブデザインの素晴らしさだと思いました。
● インクルーシブの視点で物事を見てみるのは初めてで、目からウロコの話ばかりでした。もっともっと聞きたいことだらけです。机から落ちない文具、戻さなくていいハサミ、握力がいらない消しゴム、脱ぎ着しやすい服、ボタンを押しやすいリモコン、どのアイデアも一般の人にとっても便利なものですね。
● 普段の生活の中では得られない気づきをたくさん得られた、とても貴重な時間になりました。自社以外のテーマを考えるディスカッションもあり、他の参加者のみなさんのアイデアに良い刺激を受けました。
● ワークショップを通じて「自分が知らず知らずに勝手に思い込んでいたことが多々ある」と実感しました。新鮮な気づきはハンディキャップのある方だけではなく、全ての人々にとっても有益なアイデアにつながる可能性を感じました。
「MIRAIRO Co-Designプロジェクト」体験ワークショップに参加して
前回に引き続きCo-Designプロジェクトの体験ワークショップに参加させていただきましたが、ファッションがテーマだった前回とは違い、分野の違う様々なメーカー企業の方々が集まって障害当事者の意見も交えながらディスカッションを行っていくということで、分野が違うからこそ見えてきた新たな視点もあったのではないかと思っています。個人的な感想としては、振動が響くドラムの音が好き、という点で聴覚障害があっても自身と変わらず音楽を楽しんでいることにとても嬉しさを感じました。今回のディスカッションも、今後のインクルーシブな製品開発に活かされることを切に願っています。
文:PLAYWORKS Inc. インターン 鈴木 葵