INCLUSIVE DESIGN Talk|Clubhouseとアクセシビリティ

インクルーシブデザイントーク 1 クラブハウスとアクセシビリティ

INCLUSIVE DESIGN Talk #01:Clubhouseとアクセシビリティ
日時:2021年3月2日 20:00〜21:00
ゲスト:Shamrock Records 青木秀仁
聞き手:PLAYWORKS タキザワケイタ

トークは「UDトーク」にてWEB公開されました。また、本記事は「UDトーク」のログをもとに作成されています。

 

 

伝わるって奇跡

タキザワケイタ(以下、タキザワ):インクルーシブデザイナーの PLAYWORKS タキザワです。Clubhouseにてインクルーシブデザインについてゆるく語る「INCLUSIVE DESIGN Talk」。第1回のゲストがコミュニケーション支援会話の見みえる化アプリ、「UDトーク」の開発者Shamrock Records青木さんです!

青木秀仁氏(以下、青木):よろしくお願いします。

タキザワ:今回は「UDトーク」をWeb公開し、リアルタイムで字幕配信しています。聴覚障害者やAndroidユーザーは、そちらからご参加いただけます。

青木:今日が良いモデルケースになればいいのかなと。

タキザワ:青木さんとはイベントで会った時に軽く挨拶する程度だったので、まずは青木さんについて伺っても良いですか?

青木:簡単に自己紹介すると、「UDトーク」の開発をやっていて、会社を経営しています。会社といっても僕1人しかおらず、「UDトーク」は1人でやってます。スキルとしてはアプリケーション開発ができるプログラマーですね。メインとしてiOSのアプリと、Androidを腰掛け程度にやってるという感じです。Code for Nerimaの代表もやっております。

タキザワ:社名は「Shamrock Records(シャムロックレコーズ)なんですよね。

青木:シャムロックレコード。実は「ド」なんすよ。

タキザワ:そうだったんですね。でも、あまり会社名の印象ないですね。「UDトーク」の人っていう印象なので… レコードってことは、音楽関係をやれているのですか?

青木:もともとミュージシャンとして仕事をしてて、もちろん全然売れないミュージシャンですけども、一応CDも出してて、iTunes Music Storeにもあるんですよ。ゲームのBGMや作曲編曲の仕事をしていたこともあって、その時のレーベルがShamrock Records(シャムロックレコード)なんすね。会社を作る時に名前を考えるのは面倒くさいなと思ったんで、そのまま屋号を会社名に持ってきた感じです。

タキザワ:会社を作る前は、どこかで働いていたんですか?

青木:フリーランスのプログラマーとして会社と契約して、それが音声認識の有名なアドバンスト・メディアって会社なんですね。その2000年代の前から、音声認識とスマートフォンやパソコンのアプリの組み合せでいうと、長いことやっています。

タキザワ:アドバンスト・メディアさんと業務委託してたってことですか?

青木:そうですね。ずっとアドバンスト・メディアさんにお世話になっていて、今でも「UDトーク」で使っているのは、世界一日本語を認識するAmiVoice(アミボイス)です。これ言っておくと、後からありがとうって言われるので。

タキザワ:音声認識でいうとGoogleのもありますよね。

青木:Googleの方も「UDトーク」で使っています。逆に音声認識業界の中では、インディペンデントでうちが技術を持ってるわけではないんで、いいとこ取りでいろんなものを使えるっていうのは、結構なアドバンテージなのかなと思います。アドバンスト・メディアにいる時は、議会の議事録を作るシステムを作っていて、全国の地方議会や東京都議会にも入ってるんですけど、議会の議事録って音声認識で作ってるんすよ。だから会議の記録は全部残ってるはずなんですけど、残ってないって言いますよね。

タキザワ:なぜか修正されたりとか、捨てられたりして残って無い…

青木:ちょっとこれ、これ以上話すと誰か来ちゃうから…笑

タキザワ:そうですね 笑。確かに議会の議事録って内容を要約したりはせずに、発言したままを議事録にしてますもんね。

青木:そうなんです。基本的には全部一字一句の議事録を作るんですけども、作った後に全員でチェックして出すってところまでのフローが、最短でも3ヶ月とか半年後とかなんですよね。でも音声認識を使うことによって、チェックをする前のラフなところまでは爆速でできるようになったので、業界的にはイノベーションが起きたわけですよね。

タキザワ:確かにそれはイノベーションですね。あと青木さん、手話や中国語などの勉強会をやってる印象があるんですけど。

青木:語学フェチですね。いろんな言葉が好きで、でも全部喋れるわけではなく… 「UDトーク」によって耳が聞こえない方との接点も増えたので、手話を勉強してます。でも習いにいったことはなく、人がやってるのを見て覚えた、という感じです。

タキザワ:語学への興味、面白いところって、どこら辺ですか?

青木:やっぱりコミュニケーションですよね。人に喋って思いが伝わるって、奇跡だなと思うわけですよ。日本語でのコミュニケーションなんて、だいたい通じてない。言葉が通じる、思いが通じるっていうのは、伝える側からすると伝わった時って本当にもう奇跡。

タキザワ:意外と伝わってないことって、実は多いですよね。

青木:うん。こうやって「UDトーク」を使って喋っていることを文字にして伝わるっていうのもそうだし、外国語にしたってね。挨拶を1個覚えるだけでも伝わるじゃないですか。そういうところに、すごい面白いなって感じるんですよね。

タキザワ:「伝わる奇跡」っていいですね。

青木:やっぱり伝える側にそういう意識があるかないかで、仕事もすごく円滑に進めることができるし、地域団体ひとつとってみたって、すごくスムーズに運営していけると思うんですよね。

タキザワ:PLAYWORKSでも聴覚障害者の方とのオンラインワークショップをやっていて、「UDトーク」をヘビーに使わせてもらっています。マイクをミュートにして音がない状態で、聴覚障害者とチャットや筆談、ジェスチャーでコミュニケーションしていくんですけど、伝わる難しさと伝わった感動があって、まさに伝わるって奇跡だなと思いました。

青木:やっぱりそういう経験ってすごく大事ですよね。それがインクルーシブとかダイバーシティに、すごく必要なことだと思うんですよ。今日みたいに発信する側がどうやって伝えるか考えることが、アクセシビリティの意識にも繋がるし、いろんな人が参加できる状況を主催者側が能動的に作る意識が、すごく必要なんじゃないかなと思うわけですよ。

 

 

ビジネスは9割以上が運

タキザワ:PLAYWORKSでも障害者支援サービスやプロダクト開発にチャレンジしてますけど、その領域でなかなか成功事例がない。成功というのはそれを必要としている人がちゃんと利用でき、安定的、継続的に価値提供できている状態のイメージですが、聴覚障害で言えば「UDトーク」、視覚障害で言えばBeMyEyesぐらいしかないんじゃないかと思っています。

青木:確かに、みんなうまくいってないですよね。僕はもともと障害者との関わりってなかったんですよ。アドバンスト・メディアでずっと音声認識の議事録作成をやっており、プログラマーであってアプリ開発者であって、自分が話してることが伝わらない課題意識を持って開発を始めたんで、スタートが障害福祉じゃないんですよね。だから単純にアプリビジネスなんで、無料で提供した方が広まるよねと思ったり、いくら価値があると言ったって、絶対課金なんかしないんだから。福祉のアプリってすごい高いじゃないですか。3000円で買い切りだとか、そんなんで売れるわけないと思うんですよね。

タキザワ:あとは補助金、助成金頼みになっちゃいますよね。

青木:物を作るたびに助成金集めるところから始めるのは、やめて欲しいんですよね。事業として始めるんだったら、ちゃんと事業計画書を書いて資金を集めて、普通のビジネスとしてやることは結構大事かなと思うんですよね。

タキザワ:「UDトーク」は、ビジネス的にうまくいってますよね?

青木:結果論ですよ。非常に僕は運が良かったですよ。僕のビジネス哲学としては、だいたい9割以上が運です。

タキザワ:運をどう引き寄せるかって、チャレンジし続けることしかないと思うんですよね。

青木:そうそう。なので僕がここに至るまでには、うまく行ったものも行かなかったものもある。アプリの開発だけでもすごい数をやっていて、今は「UDトーク」1本になっているというだけなので。世の中の人が見ると、うまく行ってるところにしかスポットが当たらないじゃないですか。それって、それまでにずっとやってきたほんの一部が見えただけなので。だからといって苦労話をする必要もないと思うし、そういうのを含めてビジネスは運なんじゃないかなと言い切ります。

タキザワ:「UDトーク」に至るまでに、いろいろなアプリを作ってきたということなんですね。

青木:年間で多い時は15本のアプリを作ってましたね。

タキザワ:それはかなり多いですね。「UDトーク」がいきなり出来たわけじゃなく、そこに至るまでにいろいろとあったからこそ、9割が運の世界で「UDトーク」に出会ったということなんですね。

青木:そう。出会ったですよね。もともとは聴覚障害者の友人ができたんで、その方と話すために作ったもので、自分が自分の課題を解決をするために作ったんですよね。だから「UDトーク」のユーザーは僕なので、僕が一番使ってるわけです。世の中の人も同じ課題を持っていて、あったら便利だと感じてくれているのは、まさに出会いですよね。

 

 

障害者との出会いのデザイン

タキザワ:いまの日本って、障害者と健常者が切り分けられているじゃないですか。その障害者と健常者の「出会い方のデザイン」がすごく大事だと思っています。僕は聴覚障害の方とはあんまり良い出会い方をしてなくて… ビジネスの場で相手が聴覚障害ってことを知らずに名刺交換しようとした時に、名刺に聴覚障害者と書かれていたのですが、とっさに対応ができなくて、あやふやなままで済ませてしまったんですよね。そこはもっと違う対応をすべきだったんじゃないかなと今でも思っていて、そういった経験から障害者との良い出会い方、体験をいかにデザインするか?ということを考えています。

青木:人生で最初に会う障害者の方って、すごい重要ですよね。僕は幸い聴覚障害がある方は未来を見据えてた方で、知っている方も多いと思いますが松森果林さんが「UDトーク」を提案してくれたので、松森さんいなかったら「UDトーク」は出来上がってないんです。

タキザワ:その出会いも運命というか、奇跡ですね。

青木:そうですよね。僕は逆に、視覚障害者との最初の出会いはあんまり良くなかったんですよ。今は友人もいっぱいいるし、すごく興味深いことを教えてもらっているんですけども。

タキザワ:本当にそこ大事ですよね。初めて出会う障害のある方との出会い方、どんな体験をしたかっていうのは。

青木:それで次も関わってみようと思ったりとか、モチベーションが180度変わっちゃいますからね。

タキザワ:そうですね、実際に仲良くなると障害者とかはあんまり関係ないじゃないですか。

青木:障害者であるかどうか以前に、人として合う合わないもあるので。だからまずは人付き合いで、障害っていうフィルターは僕の中にはありません。でも、福祉支援をやられている人たちが、まず障害のあるなしで見ちゃうところは、どうしてもあるのかなって思っちゃって… だから、そういうところとは距離を置いてビジネスをやっているんですけどね。

 

 

「UDトーク」の近未来

タキザワ:いきなりですが「UDトーク」にクレームがあります!

青木:クレームですか!

タキザワ:多機能なのはめっちゃ分かるし、理解すると必要な機能であることも分かるのですが、使う時はすごく不安を感じながら使っています。それなりに「UDトーク」を使わせてもらってるのですが、いまだに不安なんですよ。なんなんですかね?

青木:そこはきっと「UDトーク」ではなく、コミュニケーションへの不安なんじゃないかなって思います。文字にして伝わるのかっていうのって、別に100%ではないじゃないですか。誤認識があったら駄目なのかってなると、そうでもない時もあるし。

タキザワ:それはアプリのUIUXというよりも、これから聴覚障害とコミュニケーションするんだっていう意識があるから、そこへの不安感なんじゃないかっていうことですね。

青木:そうですよね。この分野でまともに使えるアプリが出て来たの初めてですからね。競合がほぼないんですよ。あるにはあるけど、ほぼない中で前例もないし、どう使ったらいいかなんて、正解もないわけなんですよね。僕としてはもっと「UDトーク」みたいなアプリが、どんどん出てきたらいいと思ってるんですよね。そしたらもっと使うことに対する心理的なハードルってのは下がってくると思います。大丈夫です、自信を持って使ってください。

タキザワ:そうですよね。ちょっとずつ慣れていきます。

青木:あと、自分の字幕を見るといいですよ。自分で喋ってる字幕を見ながら見ると結構落ち着きます。

タキザワ:確かに、自分が話したことを客観的に見れますね。滑舌を良くしたいというのはありますが…笑

青木:まあそれは、ボイストレーニングに行ったりだとか… 僕も滑舌は良くないんだけど、字幕を見ながらこうやって喋ってると、早く喋べり過ぎてるなっていう時に気が付けるんですよね。

タキザワ:なるほど、それいいですね!

青木:よく「UDトーク」を聴覚障害がある方の自立を支援するアプリみたいに言われることがあるんですよね。でもそれって、半分正解で半分違うんですよね。「UDトーク」は、話す側が使って伝えるためのツールなので、話す側やイベント主催側が熟知して、使える機能がいろいろ入ってるわけです。いまこのClubhouseのイベントに参加してる人って、別に何もする必要ない。リアルなイベントだって字幕ありますよってアナウンスしておけば、聴覚障害がある方がわざわざ「字幕ってあるんですか」って聞く必要もないし。だからユーザー側の体験を簡単にするために、主催者側が使うところは非常にきめ細かい設定ができるようにしてあるんですよ。すっごい盛り込んであるアプリなので、抵抗ある方もいるんですけど、主催者側になって使ってみると、全部の機能に意味はあります。

タキザワ:そうですよね。プロジェクター投影用に表示を選べたり、白黒反転で読みやすくできたり、よく見るとめちゃめちゃ細いですよね。

青木:でしょ。あんなの誰が使うんだと思うんだけど、使う時があるんですよ。そういった意味での要はUXですよね。

タキザワ:今後の「UDトーク」の開発方針や進化のイメージはあるんですか?

青木:そこなんですよね。コロナがなかったらウェアラブル周りデバイスって、もっと世の中に出てきているはずなんですよね。すでに眼鏡型のディスプレイっていっぱい出てるじゃないですか。あれとかはほぼ「UDトーク」に対応してるんですよ。

タキザワ:そうなんですね。

青木:EPSONのやつはもう「UDトーク」で見れるようになっていて、講習会や説明会に行った時は、その眼鏡型ディスプレイを持っていって、会場の人に回しながら体験してもらうっていうのをやっていたんですよね。そうやって体験をしてもらうことで、近い将来メガネかけると文字が出てくるということを、みんなに知ってもらえたんですけど… 僕はガジェット大好きなので、メガネ型のディスプレイもそうだし、ウェアラブルでいろいろ情報を発信して、受け取れるみたいなことをやっていきたかったんだけど、今は難しいじゃないですか。

タキザワ:スマホではなくてメガネなどもっと身近というか、より必要なところに情報が出てくる世界になっていくってことですよね。

青木:そうなんですよね。AppleWatchで字幕を見るのとかも作っていて、技術的にできなくなってやめてるんですけども、そういうところに可能性は結構ありますよね。アプリだけで何かをしていくっていうのは、もう攻めあぐねているかなって感じています。

タキザワ:確かに。アプリとしては既に完成していて、どれだけ精度を上げるか?みたいな世界になっちゃいますよね。

青木:そうなんですよ。ただ、何を持って完成というかは難しいんですけども、バグはあります。そのバグをなるべく完璧に近い形に直していくっていうのは、日々やってますけどね。

タキザワ:それは永遠に続くんですか? それとも、あるタイミングで完成になるんですかね。

青木:僕はプログラマーとして7年ぐらいずっと「UDトーク」1本をやってるわけですよね。それはそれでプログラマーとしては幸せなんですよ。1個の製品にずっと関われるってのは。

タキザワ:もはや自分の子どもですね。

青木:ただ受託案件などいろんな仕事をやってる人って、常に新しい技術を使って物を作れるので、それはそれで幸せなんですよね。だからこの年になって、プログラマーとしての幸せはどこにあるんだろうって、考えることもあるんですよね。時間もあるんで新しい技術も学ぶけど、やっぱりどっかで「UDトーク」のユーザー体験に結びつくことを考えながらやっていますよね。

タキザワ:そっかぁ。やはりこれからも「伝わる奇跡」を追い求めていくんじゃないですかね?

青木:もっと楽したいじゃないですか? 僕はログラマーに必要な条件って、怠け者であるってよく言ってるんですけど、プログラマーは楽するために惜しまない方がいいですよ。無駄な苦労なんかしなくていいので、「UDトーク」を編集をする方法も、もっと手離れ良くできる方法がないかなとか考えたり。たとえ誤認識があったとしても、読みやすい方法で出すにはどうしたらいいかなっていう、なるべく自動で全部いけるように常に考えているんですよね。

 

 

Clubhouseのアクセシビリティ

タキザワ:そろそろ本題というか、Clubhouseのアクセシビリティの話に行きたいなと思います。まず、Clubhouseでスピーカーとして話されるのは、今日が初めてということにびっくりしたんですけれども、Clubhouseとはどういう距離感で使われていましたか?

青木:使ってないですね。友達から招待をもらったので、どういうものかを人に説明をしたかったのでやってみたんですけども、そもそも僕は音声だけで人の話を聞くのが苦手なんですよ。視覚優位っていう特性でもあるし、発達障害とまではいかないんですけど、だから電話もすごく苦手だし。なので今も「UDトーク」が目の前にあることで、割と話せている。快適なんですよね。文字を追いながら、なんならもうタキザワさんの写真を見ながら…

タキザワ:いま想像したら、ちょっと怖いですね…笑

青木:笑。私は視覚的に情報がないと、人の話しが入ってこない。それも子供の頃からなので、この音声だけのコミュニケーションにそもそも魅力を感じない。だから、積極的にClubhouseで発信をする理由は、僕にはないなと思っていて。そんな中、聴覚障害の方たちが「UDトーク」を使って、Clubhouseに参加してみたいって言っていたので、こういうふうにやればできるみたいな感じで、話をしたりしてました。どの媒体であっても話す方が字幕を提供すれば、聴覚障害者の方が自分で用意しなくったって字幕で見れるわけですよね。今回みたいにやることを理想にしていたんだけども、やったところでClubhouseじゃなくてもいいなと思ったんですよ。

タキザワ:Clubhouseのアクセシビリティで僕が難しいなと思ったのは、そもそも聴覚障害者を対象にしていないコンセプト、サービス設計になっている。そんなサービスは他にもいっぱいあるので、通常はスルーされていたのが、ここまで盛り上がると気になっちゃうってことだと思うんですよね。アプリ提供側からすると、なかなか難しい問題だなって感じています。

青木:ラジオとかはみんなどうなのって思うわけですよ。僕はもうずっと昔からラジオも文字つけようって言ってるんですよね。「UDトーク」で配信すればラジオ局から字幕配信できるじゃないですか。やれるのにやってないわけですよ。僕はやれることは全部やった方がいいんじゃないかって、優しく強く言います。

青木:タキザワさんClubhouseハマってますよね?

タキザワ:こういうサービスはどう利用するかだと思うので、自分なりにいろいろな使い方をトライアンドエラーで試してる感じです。個人的に楽しかったのが、ClubhouseがVoiceOverに対応したことによって視覚障害者のユーザーが増えてきているんですね。視覚障害者がVoiceOverを練習するルームが出来ていて、入ってみたら12人中晴眼者は自分だけで、そこで視覚障害者の練習台になったりしてました。さらには自分もVoiceOve縛りでClubhouseにチャレンジしてみたんですね。そうしたら、視覚障害者の方が次々とルームに来てくれて、VoiceOverの使い方を教えてくれるんですね。3本指で4回タップするとか、4本指でタップするとが、指2本づつでひねるとローターが使えるとか、どれも裏技みたいなんですよね。

青木:ありますあります。

タキザワ:何回試してもなかなかうまく行かなくて、視覚障害者に励まされながら教えてもらうっていう。そういう体験はなかなかなんか新鮮でしたね。

青木:そうですね。僕はもっとアプリはVoiceOverに対応した方がいいと思ってるんですよね。一昨年に WWDCっていうAppleのカンファレンスにサンフランシスコまで行ったんですけど、もともとアクセシビリティに興味があったんで、その時はほとんど英語なんか喋しゃべれなかったのに、突撃インタビューで色々聞いてきたりとかして。耳が聞こえない開発者の方に聞いたりしたんですけども、アクセシビリティを考えるだけのラボがあるんですよね。アクセシビリティ専門のチームがラボをオープンしてて、そこで相談に乗れるわけです。そのチームが会場のアクセシビリティーもやっていると聞いて、なんか考え方が違うなと思ったんですね。

タキザワ:そうですね。本当にそれぐらいじゃないと、やっぱりダメですよね。

青木:そこまでやってAppleの体験なんだなっていうふうに感動しつつ、アクセシビリティ関係でVoiceOverのセッションに出てきたんですよ。そしたらまず冒頭に、参加者のiPhoneをVoiceOverにしてみろって言われて。自分が作ったアプリをそれで操作できるか、目をつぶって操作できるかみたいな感じになるわけですよ。

タキザワ:すごい、素晴らしい。

青木:最終的な結論としてはVoiceOverに対応して、目が見えない方でも使えるように作ったUIは、一般の方も使いやすいアプリになるんだってことを強く言ってるんですよね。

そういうUIの並び順だとか表現とかに関して、洗練されていく。そういうの日本では報道しないじゃないですか。WWDCの発表でも結構言ってるのに、日本では取り上げられないなと思いながら帰ってきましたけど。

タキザワ:日本でいうとソニーとかパナソニックとか、そういった大手メーカーがもっと本気で取り組まなきゃいけないんですかね。

青木:僕もそう思います。だから、日本でやってるカンファレンスやシンポジウムなんかも、イベント主催者側が課題意識を持つことが大事だなって思いますよね。どうしても日本だと、外注しちゃうじゃないですか。

タキザワ:専門家に依頼する形になりがちですよね。

青木:参加してくれる人へのサービスの一環というふうに考えたらいいと思うんですよ。障害者支援が清く尊いというものでもないじゃないですか。単純に参加者に対する1つのサービスって考えたら、それやろうよって思うわけですよね。

タキザワ:障害って探求していくと、すごく面白い世界じゃないですか。知らないことだらけだし、発見からクリエイティビティに繋がっていくことあるので、そこにもっとクリエイターやデザイナーが気づいて欲しいなと思います。

青木:ありますあります。やっぱ体験大事ですよね。特にアクセシビリティに関しては、頭ではわかっていても実際に自分がそういう立場になってみるとか、知り合いになって本音を聞いていると、学校で習っていることとだいぶ違うんですよね。

 

 

「やらない」との戦い

タキザワ:青木さん、いろんなものと戦かっている印象があります。

青木 :すごい戦かってます。僕、結構哲学とかが好きで、常に正義ってなんなのかなって考えたりとかしてる時期もあったんですけども、正しいと思ったことは利己的じゃない限りは実行してもいいじゃないかなと思ってるわけです。利己的な正義は意見が分かれてぶつかる原因になるんで、利他的な正義を追い求めていくと、やれることはやろうよっていうふうに思うわけです。それがなるべく押し付けにならないように心がけてはいるんだけれども、どうしても戦ってしまうこともあるってとこですよね。

タキザワ:それは正義にための戦いですからね。

青木 :海外を調べていくと、アメリカはやればいいことをやってしまった国なんですよ。だから字幕もついてるし、聴覚障害者のアクセシビリティはやれば解決することだったから、国でやってるわけですよね。それと同じ解釈で日本もできないのかなぁと思うわけです。解決できないことがいっぱいある中でテクノロジーの進歩によって、聴覚障害者のアクセシビリティーはやればできることになってきていると思ってるんですよね。言い切っちゃうとまた揉めちゃうんで言わないですけど、字幕つければいい物はいいじゃないですか。手話通訳にしたって手話通訳を呼べばいいだけなので、マンパワーとお金で解決ができることなので、みんなでやればいいだけじゃない?っていうふうに思うんですよね。それをやらないところが多くて、戦かってる感じです。

タキザワ:そうですよね。

青木:字幕なんか全部つけちゃえばいいと思うんですよ。YouTubeのコンテンツにしても。テレビは字幕付与率はすごく高いんですけども、生放送とか緊急放送でつかないっていうのは、話題に度々あがりますよね。

タキザワ:聴覚障害の方は、災害などの緊急時が情報支援が課題ですよね。

青木 :そうそう。「UDトーク」が聴覚障害者の自立支援のアプリってことは否定はしたんだけど、究極の自助ツールでもあるんですよね。テレビの前に置けば、ある程度字幕が出るわけです。

タキザワ:最近の地震でも、NHKのニュースを「UDトーク」でWeb公開されてる方がいましたよね。

青木:はい。著作権的に結構ギリギリなんすけどね。でも緊急時はいいだろうみたいな感じです。それで言うと、北海道地震の時もラジオやテレビをボランティアが文字化して配信したってこともあるし。そういう感じに究極の自助ツールになってくると、自分で解決できることはもう公に言わなくてもよくなっちゃうんですよね。だから当事者の声が上がらなくなっていくという懸念はあるんですよ。特に聴覚障害に関してはね。だって要望を言うのって面倒くさいじゃないですか。自分で調べる方法を提供してあげれば、自分で調べた方が楽なんですよ。

 

 

Shamrock Records の今後

タキザワ:「UDトーク」以外もやりたい、と書かれているの見たんですけれども。

青木:そうそう、最近ずっと逃げてきたサーバーサイドの勉強をしていて、ちょっとまだ計画段階なので言えないんですけども。面白いことできたらなって思ってますね。基本的に僕は怠け者で働きたくないので。

タキザワ:うん、マイクラやってるイメージがあります 笑

青木:最近あまりマイクラできてないんですよね。マイクラでも何でも、突き詰つめれば仕事になるんですよね。

タキザワ:マイクラでプログラミングを教える教室もありますよね。

青木:あれもね、一応遊んでるようで全部試してるので…

タキザワ:なるほど。仕事のリサーチだったわけですね 笑

青木:そうです、リサーチです。僕も年齢的に後半世代のプログラマーになったのか、いろいろ考えるところもあり、新しいことに興味を持ってやっていこうかなっていうふうな感じで。

タキザワ:大人になってからのチャレンジって、今までのノウハウを生かせますしね。

青木:ただ、やっぱり若い頃の方が頭に入ってきますよね。20代と40代の1日って全然重みが違うなと思って。だから反対にゆっくり勉強することを楽しめるといいでですよね。でも、若い人にはまだまだ負けないようにしないとね。

タキザワ:シャムロックレコードは社員募集とかしないのですか?

青木:ないんですよ。いままで数人、働きたいんですって言ってくれた人がいて。「UDトーク」に感動して、社員の募集ないですかって言ってくれた人がいて、本当に嬉しかったんですけど、ごめんなさいうちの会社仕事がないんだって返事して…

タキザワ:「UDトーク」1本でやってますと。

青木:これしかやってないから。いま会社で「Nerima Base」というイベントスペースをやっていますが、地域コミュニティにもなっているので、例えば外国人の方を入れて言語のコミュニティを作ることを考えています。「UDトーク」とは違うビジネスを始めてみようかなって、少しぼやっと考えてはいます。

タキザワ:コロナ禍においても、人が出会える場所があるって大事ですよね。出会の場があるから、「UDトーク」が活きるってのもありますしね。

青木:そうなんすよ。うちの英語のイベントも中国語のイベントも、全部字幕付きなんすよ。聴覚障害のある方も参加できる英語イベントをやってるんですよ。聴覚障害がある方で英語が喋れる人は発音してもらっていいし、喋れない人は「UDトーク」でタイピングしてもらって英語でやってもらうと。

タキザワ:なるほどね。

青木:耳聞こえない2人が英語で喋ってて、その間に僕が打ってる英語があるって言うような。最近は小学生の難聴のお子さんも参加してるんですよ。そういうふうなことも「UDトーク」が使えるってことを、もっと広めたいなと思ってるんですね。

タキザワ:ビジネス的観点で、「UDトーク」を活用した研修プログラムをつくるってのはあるかもしれないですね。

青木:ですよね。僕は基本的に働きたくない人だから、タキザワさんやってくれないかな。

タキザワ:やりましょうよ。僕は働くの好きなんで!

タキザワ:終了の時間になってしまいましたが、初めていろいろと深い話ができて面白かったです。青木さん、ありがとうございました!!

青木:ありがとうございました!

 

 

UDトーク 

https://udtalk.jp/

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