COLUMN|ピンクのココテープが体現するインクルーシブなイベントの未来 Designship2024 レポート

PLAYWORKS コラム ピンクのココテープが体現するインクルーシブなイベントの未来 Designship2024 レポート 会場の床面に設置されたテープをガイドに、視覚障害者が歩いている。

「ココテープ」は必要な場所に必要な時だけ貼ることで、視覚障害者の移動をサポートする画期的な製品です。2024年10月に東京ミッドタウンで開催されたデザインカンファレンス「Designship 2024」では、ココテープを開発したPLAYWORKSが「INCLUSIVE PARTNER」として協賛。Designshipカラーであるピンク色のココテープを制作し、会場に設置しました。本コラムでは、デザインに関心がある視覚障害の学生3名が体験した、Designship 2024をレポートします!

 

PLAYWORKS が INCLUSIVE PARTNERに。イベントに多様性を提供

2024年10月12日(土)、13日(日)の2日間、東京ミッドタウン ホール&カンファレンス(東京都港区赤坂)で開催された「Designship 2024」。デザインの意味や対象が変化し続ける時代、Designshipは分断された知見と経験を結びつけ、新たな価値を生み出す場として注目されています。

今年で8回目を迎えるDesignshipでは、会場とオンラインを合わせて5,000人規模の参加者が集い、2日間で約80のセッションが展開されました。デザイナーやデザインに関心を持つビジネスパーソンが一堂に会し、最新のトレンドや知見を共有する場として、大きな盛り上がりを見せています。

PLAYWORKS株式会社はイベントの趣旨に賛同し、「INCLUSIVE PARTNER」として協賛。デザインの多様性を追求する場であるDesignshipにおいて、インクルーシブデザインによって開発されたココテープで、イベントの多様性を提供したいと考えました。

今回は特別にDesignshipカラーであるピンク色のココテープを制作し、会場内の主要動線に過去最長となる200mを設置。これにより視覚障害者の移動支援にとどまらず、インクルーシブデザインの価値を、参加者一人ひとりが体感できる機会となりました。

Designship2024会場の東京ミッドタウン ホールの入り口。受付までの動線や自動ドアの開口に、ピンク色のココテープが設置されている。
Designship2024会場の受付。手前の自動ドアから受付カウンターに向かって、ピンク色のココテープが設置されている。

エントランスでは、ピンク色のココテープが来場者をお出迎え。そこから受付、メインホール、セッション会場へとスムーズに誘導します。

ココテープを目にした一般参加者からも、「道を覚えるのが苦手だけど、ココテープが動線の案内になって便利だった」「最初はピンク色がカワイイと思っていたら、白杖を持った方が歩いているのを見て、視覚障害者のためなんだと気づきました」など嬉しい反響をいただきました。

視覚障害のある方はもちろん、すべての来場者にとって、会場内の移動をより直感的でストレスフリーなものにしています。

Designship2024会場内。メイン動線とホール入口とトイレに向かって、クロスしてピンク色のココテープが設置されている。
床面に設置されたピンク色のココテープのアップ。黒いスニーカーがココテープを踏んでいる。ココテープの端部にはロゴとQRコードが掲載されたシールが貼られている。
ノベルティ配布のテーブルに、ロービジョン体験キットが置かれている。

PLAYWORKSが開発したロービジョン体験キットをノベルティとして配布しました

 

デザインに関心のある視覚障害の学生がイベント参加

イベントには視覚障害のある学生、カワモトさん、ヌノカワさん、スエムネさんの3名が参加しました。

カワモトさんは大学の情報学科でプログラム設計やWebデザインを学んでおり、視覚表現に留まらないデザインに関心があるのだそう。また、ヌノカワさんは小さな頃からファッションデザイナーやインテリアデザイナーになる夢があり、視覚的に見えづらくなってからは、アクセシビリティの観点からデザインに興味を持つようになったと語ってくれました。スエムネさんは医療(鍼灸・マッサージ)を学んでおり、人が心地よく暮らすためのデザインに関心があるのだそうです。

視覚障害のある学生として精力的に活動する3名ですが、一方で「一般向けのデザインイベントに参加する機会はほとんどないので、とても楽しみにしていました」と嬉しそうな様子。

Designshipの看板の前で、視覚障害のある学生3名が並んだ集合写真。足元にはピンク色のココテープが設置されている。

左からカワモトさん、ヌノカワさん、スエムネさん

 

会場に到着するとすぐに、エントランスに設置されたココテープをガイドに、スムーズに受付をおこなうことができました。

「ココテープがあるだけで、会場全体を把握できて嬉しい。一度通ったら道順を覚えられるので、安心して一人で移動できます」と語ってくれたヌノカワさん。

カワモトさんも「ココテープがあれば、少なくともその線上には障害物や行き止まりがないとわかるから安心できるよね」「逆に言えば、テープを障害物の手前に設置することで、注意喚起にも使えるかも」と話してくれました。

会場内の床に貼られたピンク色のココテープをガイドに歩く視覚障害のある学生たち。みんな笑顔で談笑している。
会場内の床に貼られたピンク色のココテープをガイドに歩く視覚障害のある学生たち。みんな笑顔で談笑している。

イベントではスポンサーブースを中心に、最新のデザインや取り組みを体験することができます。各ブースではちょっとしたゲームやお土産などが用意され、楽しく回っているうちに、デザインに対する理解を深めることができます。

会場を訪れた3人も、普段は触れることができないような最先端の技術に触れたり、スタッフとのコミュニケーションを通じて、デザインの面白さを改めて実感したと語ってくれました。

スポンサー企業ブースのエリア。中央にココテープが設置されていることで、混雑していても人を避けて歩いている。
スポンサー企業ブースでノベルティをもらって笑顔になっている視覚障害学生の女性。

今回はガイドヘルパーと訪れていたスエムネさん。イベントを楽しみながら、普段は単独では人が多いイベントや街に出るのが難しいのだと教えてくれました。

「まっすぐな道でも、人が多いと耳から情報を得ることが難しく、方向を見失いがちなんです。でも、今回はココテープがあることで進行方向が明確でした。ココテープがもっと色んな施設に貼られたら、一人でも訪れることができるかも」と喜んでいるのが印象的でした。

また、一緒に訪れていたガイドヘルパーの方も、「目が見えない人をサポートするうえで、ココテープが貼られていると、私自身も迷うことなくサポートできるのでお互いに安心です」と。視覚に障害がある方だけでなくサポートをする方にとっても、アクセシビリティは重要なのだと実感します。

スポンサー企業ブースでガイドヘルパーから説明を受けている視覚障害学生の男性。

 

PLAYWORKS タキザワによる講演『インクルーシブデザインで「誰もが使いやすい」のその先へ』

ステージではPLAYWORKS株式会社 代表 タキザワによる『インクルーシブデザインで「誰もが使いやすい」のその先へ』と題した講演が行われました。新しいデザインの可能性を求める参加者が集まり、熱心に耳を傾けていました。

タキザワ氏は講演の冒頭、「インクルーシブデザイン」とは誰もが使いやすいだけではなく、これまで排除されていた人々と共創することで、未知の価値を創出するものだと語りました。その後、ユニバーサルデザインとの違いを丁寧に解説し、インクルーシブデザインの可能性と魅力を力強く訴えました。

ステージに大きなスクリーン。両サイトにはDesignshipのタペストリーが吊れている。スクリーンにはタイトル「インクルーシブデザインで誰もが使いやすいのその先へ」とPLAYWORKSタキザワの写真が写されている。
ステージ上でマイクを持ってプレゼンテーションするPLAYWORKS タキザワ。

そして、PLAYWORKSが実践してきたインクルーシブデザインの実例の数々を紹介。会場に設置されたココテープにも触れ、 「養生テープくらい気軽に使える点字ブロック」という斬新なコンセプトや、大手企業や博物館などの導入実績を紹介しました。

ステージ上でマイクを持ってプレゼンテーションするPLAYWORKS タキザワ。スクリーンにはDesignshipとココテープのロゴが並んでいる。

 

インクルーシブデザインの可能性を提示した Designship 2024

イベント終了後、視覚障害学生のみなさんに感想を伺いました。普段はなかなか触れることのできないデザインの最新情報や技術に触れ、それぞれの視点から新たな発見があったようです。

3名に共通していたのは、「ココテープがあることで、自分のペースで会場を回ることができました。人に頼りすぎることなく、興味のあるブースやセッションを体験できたのが良かったですね」と語っていたこと。単独歩行ではなくとも、ココテープがあることで自身で会場を把握できるため、自分の意思でイベントを楽しめている感覚が嬉しかったと教えてくださいました。

さらに、「正直、視覚障害があると人がたくさんいるイベントには参加する勇気が出ないんです。でも、ココテープのようなインクルーシブな取り組みがあると、自分たちも歓迎されているような気持ちになる」という感想も。会場のアクセシビリティというと物理的なサポートをイメージしがちですが、それ以上に障害の有無に関わらず、来場者へ歓迎の気持ちを示すことが重要なのだと気づかれされました。

最後にみなさんが「これからも、こうした取り組みをしているイベントが増えていってほしいです。私たち自身も、積極的に参加して意見を伝えていきたい」と前向きな想いを語ってくれました。多様なリードユーザーと共創するインクルーシブデザインの可能性を、鮮やかに示したDesignship 2024でした。

Deseignship会場に設置されたピンク色のココテープをガイドに歩く、視覚障害学生たち。

 


 

EVENT|「Designship 2024」登壇・協賛しました

https://playworks-inclusivedesign.com/news/news-7862/

 

視覚障害者歩行テープ「ココテープ」

https://coco-tape.jp/