REPORT|mitsuki × PLAYWORKS「ガイドヘルパー育成研修」レポート

視覚障害者と共に歩く 大学生と描くガイドヘルパーの未来像 mituki × PLAYWORKS ガイドヘルパー養成研修レポート

PLAYWORKS株式会社は、同行援護事業を行う株式会社mitsukiと共同で「ガイドヘルパー育成研修」を実施し、「暗闇おやつ」「視覚障害者からの問いかけ」などのオリジナルワークを提供しました。また、学生インターン向けに、ガイドヘルパー資格を無償で取得できる制度をスタート。今回は2名のインターン生が「同行援護従業者養成研修一般課程」を取得しました。本記事では2025年2月20日・21日に実施した、研修の様子をレポートします!

 

視覚障害者と共に歩く、大学生と描くガイドヘルパーの未来像

ガイドヘルパー(同行援護従業者)とは、視覚障害者の外出時にサポートを行う専門職。移動時の安全確保だけでなく、道案内や買物の支援、交通機関の利用サポートなど、日常生活の幅を広げる役割を担います。資格を取得することで、視覚障害者支援のプロとして、福祉や接客の現場でも活躍できます。

今回の研修ではmitsukiのプログラムをベースに、PLAYWORKSが導入のアイスブレイクを担当。1日目は「暗闇おやつ」、2日目に「視覚障害者からの問いかけ」を実施しました。また、研修前には事前知識を共有する「オンライン研修」が実施され、受講者は基礎知識を得たうえで実践的な研修に臨んでいます。

教室内で7人の学生が、ハの字型に並んだ机に座り、講義を真剣に聞いている様子。

 

1日目:視覚障害者の理解と基礎技術の習得

  • アイスブレイク:暗闇おやつ(PLAYWORKS)
  • ペアワーク:弱視体験
  • グループワーク:署名・問診票代筆、商品説明、障害者差別の裁判事例を学ぶ
  • 室内演習:ガイドヘルプの基本動作
  • 屋外演習:視覚障害者と共に歩行体験

2日目:支援技術の実践と応用

  • アイスブレイク:視覚障害者からの問いかけ(PLAYWORKS)
  • 講義:視覚障害者の心理
  • 屋外演習:お昼ご飯を買いに行く
  • 屋内演習:飲食時の情報提供
  • 屋外演習:駅での移動支援
  • 病院演習:病院での移動支援、情報提供
  • 振り返り・講義:同行援護従業者としての心得
  • 修了式

 

 
  

大学生7名が集まり、2日間の研修スタート!

会場である秋葉原駅の近くのmitsukiオフィスに、PLAYWORKSの学生インターンを含めた7名の大学生が集まりました。受講者は大学で学んでいることや参加動機もさまざま。「インクルーシブデザインについて学びたい」「家族に視覚障害のある人がおり、当事者理解やサポートをしたい」など、それぞれの意気込みを語ってくださいました。また、講師として視覚障害のある大学生の山田端希さんが参加し、当事者ならではの経験や考え、アドバイスを伝えました。

みつきの髙橋さんが、スライドを使って話をしている様子。スライドには当日のスケジュールが表示され、受講者が机に向かって講師の話に集中している。

 

 

1日目:体験から視覚障害を学ぶ

アイスブレイク:暗闇おやつ

1日目は、PLAYWORKSが提供する「暗闇おやつ」のアイスブレイクからスタート。受講者はロービジョンの見え方を疑似体験できる「ロービジョン体験メガネ」をかけて、手探りでお菓子を食べ、メーカー、商品名、味を予想します。初対面の受講者同士でしたが、このワークを通じて自然と会話が生まれ、和やかな雰囲気で研修は進んでいきました。

PLAYWORKSタキザワが、ジェスチャーを交えて説明している場面。表情は穏やかで、背景のホワイトボードには簡単な図や文字が書かれている。

 
 

弱視体験:視覚障害者が日常的に直面する困難を実感

次に行われたのは「弱視体験」のワーク。受講者は引き続きロービジョン体験メガネを装着し、さまざまな見えにくさを体験しました。

 

① 視野狭窄「メール送信」:狭い視野で画面を見て自己紹介メールを送信

視野狭窄を体験できるメガネを装着し行った「メール送信」。スクリーンに映し出された指示に沿って、自分のスマホでメールを送ります。一見簡単そうに感じますが、視野が狭まることでスクリーンの文字を正確に読み取ることができず、指示とは違う内容を送ってしまう受講者も。慣れた動作であっても、見えにくいと情報を正しく受け取ることが難しい場面があるのだと、実感するワークとなりました。

 

② 視野狭窄「クイズ」:狭い視野で部屋の中のクイズを探して回答

続いて、視野狭窄を体験するメガネをつけたまま、部屋中のさまざまな場所に貼られたクイズを探し出し、回答するワーク。視野が狭い状態でクイズが書かれた紙を探すのは一苦労。さらに床には小さな障害物が設置され、歩行の難易度が上がります。視覚障害のある方をサポートする際は、室内の広さに関わらず、丁寧な情報提供が必要であることがわかりました。

 

③ 低視力「チラシや冊子を読む」:見えにくい状態でパンフレットの情報を読み取る

最後は、低視力を体験できるメガネを装着し、チラシや冊子の情報を読み取る体験。普段は容易に読める文字でも、大きさや色、背景の違いによって読みにくくなることに気づき、受講者たちは驚いていました。実際にさまざまな見えにくさを体験してみると、視覚障害者が日常的に直面する困難を体験を通じて理解できました。ガイドヘルパーとして従事する際も、当事者の立場に立った支援を行うための第一歩となりました。

 

ペアワーク:視覚情報を提供する

午後からは、視覚障害者へのサポート方法を具体的に学ぶペアワークを実施しました。受講者は交代でサポート役と視覚障害者役を体験し、「どのような説明が分かりやすいか」「必要な情報は何か」を実感しながら学んでいきます。

 

① 署名・問診票の代筆:利用者の代わりに書類に記入する際の配慮点を学ぶ

署名や問診票の代筆は、利用者の個人情報を取り扱うため、情報の伝達ミスや記入の不備に注意が必要です。言い回しや漢字表記に配慮しながら、代筆を進めました。

 

② 商品説明:視覚情報が得られない相手に商品の特徴を説明

商品の色や形、デザインなどの情報提供をするワークも実施。サポート役が用意されたハンカチや靴下などの特徴を視覚障害者役に対して説明します。受講者の誰もが相手が想像しやすい細かなニュアンス表現や比喩を駆使しながら、丁寧に説明をする様子が印象的でした。

  

屋外演習:実際の歩行体験

1日目の最後には、実際に外に出て歩行演習を行いました。受講者は2人1組になり、ガイド役と視覚障害者役を交代しながら、「声のかけ方」「誘導の方法」「障害物の通過方法」「階段の案内方法」などを実践を通して支援技術を習得できるワークです。

  

 

2日目:実践的な支援技術の習得

アイスブレイク:視覚障害者からの問いかけ

2日目はPLAYWORKSが提供する「視覚障害者からの問いかけ」から始まりました。視覚障害のある大学生に山田さん、川本さんがグループに分かれ「自分の兄弟の結婚相手が視覚障害者だったら?」「視覚障害・聴覚障害・身体障害、選ぶならどれ?」など、鋭い質問が投げかけられる時間に。これらの問いかけに受講者一人ひとりが真剣に向き合うことで、障害に対する理解と共感を深めることができました。

 

演習:ごはんを食べる

2日目の屋外演習では、実際にペアで近くのお店に昼食を買いに行き、利用者のサポート方法を実践しました。メニューの説明や支払いのサポート、店内の移動など、実生活に即した場面での支援方法を学びました。また、購入した昼食は事務所に持ち帰り、2人組のペアになって食事の際の情報提供を体験。お弁当の大きさやパッケージの開け方、おかずの配置などを互いに伝えながら、楽しく食事をしてもらうための支援の工夫を学ぶことができました。

 

屋外演習:駅での移動支援

午後からは駅に移動し、階段やエスカレーターの昇降、切符の購入、電車の乗り降りなど、公共交通機関利用時のサポート方法を練習。混雑した駅構内での誘導や乗り換え時の案内など、支援に必要な実践的スキルを習得しました。晴眼者は普段何気なく利用している電車ですが、改札や階段、駅のホームなどでは視覚障害者にとって危険になりうる場面がたくさんあります。

特に電車の昇降時は、電車が満員で人から押されてしまったり、電車とホームの間に隙間があったりと、利用者が不安に感じやすいシーンが多いことがわかりました。電車のドアが開いたら、まずはサポート役が一歩足を踏み出し、利用者が安全な状態になったことを確認して、後ろ足も踏み出すなどの安全な誘導方法を練習しました。

 

 

PLAYWORKS学生インターンの感想

今回の研修では、PLAYWORKSの学生インターン2名も「同行援護従業者養成研修一般課程」の資格を取得し、貴重な経験を得ることができました。

髙倉さんの感想

研修では2人1組でガイド役と利用者役を交代しながら学び、利用者役を体験することで「ガイドの声がどのように伝わるのか」を実感できたことが印象的でした。

特に、「事業所周辺を目を閉じてガイドを受けながら歩くワーク」が心に残っています。最初は視界を遮った状態で歩くことに不安を感じ、「すべての情報を細かく伝えてほしい」と思いましたが、次第に必要な情報だけを伝えてもらえば十分だと感じるようになりました。

この経験から、利用者のニーズは一人ひとり異なり、ヘルパーは対話や観察を通じてそれを把握し、柔軟に対応することの大切さを身をもって学びました。また、同世代で障害や福祉に関心を持つ仲間と出会えたことも、大きな刺激となりました。

小島さんの感想

PLAYWORKSのインターン活動で視覚障害者のガイドを行うため、この研修機会は大変勉強になりました。特に情報保障の難しさを再認識しました。

同行援護は情報保障だけでなく、目的地への案内や障害物・周囲の歩行者への注意など、多くの意識を必要とします。「情報を取捨選択せず伝える」重要性と「優先順位をつけて伝える」バランスの必要性を実感しました。

最も印象に残ったのは「当事者心理」のワークで、視覚障害当事者から「障害受容」のプロセスを聞くことができました。同年代の当事者がどのように障害を受容していったか知ることは貴重な経験であり、休憩時間や昼食時にもこのテーマについて受講者と活発に意見を交わすことができました。

 

 

 

mitsuki 代表 高橋昌希さん コメント

mitsuki × PLAYWORKS コラボ研修の第1回目を終えて、株式会社mitsuki代表の高橋昌希さんから、研修の感想と今後の展望についてコメントをいただきました。

mitsuki 代表 高橋さんの顔写真

 

mitsuki × PLAYWORKS コラボ「ガイドヘルパー研修」の感想

PLAYWORKSさんには「暗闇おやつ」と「視覚障害者からの問いかけ」、2つのワークをお願いしました。研修1日目で初対面の学生さん同士、緊張していた様子でしたが、「暗闇おやつ」のワークで自然とコミュニケーションと笑顔が生まれ、良い雰囲気で研修をスタートすることができました。

また、研修2日目の「視覚障害者からの問いかけ」では、健常者であれば戸惑ってしまうような鋭い質問が投げかけられていました。これらの問いかけを、大学生1人1人が真剣に向き合い、言葉にすることで、しなやかな感性を養うことができると感じました。

今回は大学生が対象で、大学や学部はさまざま、関西からの学生もおりましたが、最後には全員が積極的にコミュニケーションを取っている姿が印象的でした。未来ある学生たちに、視覚障害者と関わるガイドヘルパーの資格をお取りいただくことができ、非常に有意義な研修になったのではないでしょうか。

mitsukiの今後の展望

今後は、視覚障害者の外出を支援するガイドヘルパーの派遣事業や、資格取得のための研修開催はもちろん、今後は引っ越しや家の購入などの住環境、就職や転職、副業などの仕事関係、趣味や恋愛、結婚など、視覚障害者の生活全般をサポートできる幅広い取り組みを行っていきたいです。

視覚障害に関して困ったことがあれば「まずは、みつきに相談しよう」と思ってもらえるように、柔軟な発想で新しい取り組みにチャレンジしていきます!

 

 

大学生限定「mitsuki × PLAYWORKS ガイドヘルパー育成研修」を受講してみませんか?

mitsukiとPLAYWORKSのコラボによる本研修は、実践を通じてガイドヘルパーとしての知識と技術を習得できる貴重な機会となりました。今後も、視覚障害者支援をより多くの人に知ってもらうため、研修の機会を提供していきます。

特に大学生の皆さんにお知らせしたいのが、mitsuki × PLAYWORKS のコラボ研修は、今後も学生限定で開催予定であること。さらに、PLAYWORKSの学生インターンは、ガイドヘルパー研修を無料で受講することができます!

視覚障害者の支援やインクルーシブデザインに関心がある方は、ぜひこの機会に研修への参加を検討してみてください。障害や福祉に関心を持つ同世代と出会える貴重な機会になるはずです。
 

mitsuki「同行援護従業者養成研修」について
https://spot-lite.jp/helper/

 

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