INTERN INTERVIEW 01|鈴木 葵

PLAYWORKS インターンインタビュー1 鈴木葵 悲しい思いが減ることに、希望を環感じる。

PLAYWORKSのインターンは、クライアントワークやプロジェクトに関わる中で、インクルーシブデザイン・サービスデザイン・ワークショップデザインについて学んでいます。今回は2021年2月からインターンとして活動している、鈴木葵のインタビューをお送りします!

鈴木 葵  Aoi Suzuki

札幌市立大学大学院 デザイン研究科 博士前期課程2年

北電興業株式会社 主催 電柱広告活用ビジネスモデル公募 特別賞受賞・ワークショップ研究会 苑 主催 新入生向けオンラインイベント「ばらんば」学長奨励賞受賞・趣味はプロ野球観戦(ファイターズ大好き)、創作(ものづくり・考えること)

インタビュー風景 / 左:インタビューアー フィッシュ明子 右:鈴木葵

 

まずは鈴木さんのことを簡単に教えてください

大学ではデザインを専攻し、卒業研究でセクシャルマイノリティをテーマに、当事者の友人にインタビューを行い小冊子を制作しました。そこで「当事者の存在を介して知るきっかけを作る」ことに価値があると感じ、また以前から興味のあった地域活性化に関する研究をしたく、大学院に進学して現在に至ります。

現在取り組んでいる修士論文では「関係人口」をキーワードに、北海道最北の宗谷地方東部に位置する浜頓別町にスポットをあてています。ここはオホーツク海に面し、鳥獣保護区に指定されているクッチャロ湖があるなど、自然豊かな土地です。祖父母が住んでいたので子どもの頃からたくさんの時間を過ごし、私にとってはほっとする大切な場所ですが、このまま人口減少が進んでいくと、町が消滅しかねない、そんな状況にあります。

私の祖父がここで長く郵便局員をしていたこともあって、あえてSNSを使わず、手紙でやりとりしながら祖父に浜頓別町のことを教えてもらい、私を介して遠くに住む第三者にも浜頓別町のことを伝えるという実践を行っています。

インターネットなどの二次情報ではなく、当事者から聞くからこそ分かるリアルな言葉や感覚の重要さを、セクシャルマイノリティの方のインタビューから感じていたので、今回もそこにこだわりました。卒業研究では小冊子を限られた人にしか見せられなかったので、今回はイベントを開催することで、多くの人に見てもらい、来場者の方からのフィードバックも分析の対象にしたいと思っています。

具体的には11月後半に、現地の道の駅でやりとりした手紙を展示し、手紙のやりとりに関わってくださった方とトークセッションを行う予定です。

 

PLAYWORKSでは具体的に何をしているのですか?

主にオンラインワークショップのアシスタントや、レポート記事の作成などを担当してきました。大学でもワークショップ研究会に所属しているので、代表のタキザワさんのワークショップの裏側や、ファシリテーションの現場を見ることができるのは、とても勉強になりますね。

私自身は、司会などでグイグイ引っ張っていくタイプではなく、グループワークでも横から意見を出したり、書記をやったりといったサポート役が向いているんです。ですからインターンでも、そういった自分の強みを活かした役割をいただいています。

2021年2月からインターンをしているのですが、性格的にタスクを同時並行できないので、就活をしつつ、息抜き的に活動させてもらっていました。自分にあったタイミングで関わらせてもらえるのも有難いですね。

 

PLAYWORKSでインターンをはじめたきっかけは?

学部時代にグラフィックデザインからプロダクトデザイン、UXデザイン、コミュニティデザインなど、様々なジャンルのデザインを学びましたが、中でもユニバーサルデザインに興味がありました。そんな中で、ゼミの先生にPLAYWORKSを紹介していただいたのがきっかけです。

健常者、障害者関係なく「ともに創り、社会を前に進めよう」というビジョンに深く共感しましたし、卒業研究で得た学びである「当事者の存在を介して知るきっかけを作る」ことができると考え、インターンに応募しました。

私は生まれも育ちも札幌ですし、タキザワさんは関東で、実はまだ一度もリアルでお目にかかったことはないんです。コロナ禍だからこそできた、インターン経験だと思います。

 

インターンを始める前と後で印象は変わりましたか?

インターンに応募する前は、障害のあるマイノリティの方たちと一緒にワークショップをするんだな、くらいのふわっとしたイメージしかありませんでした。インターンとして加わる前に、インクルーシブデザインのワークショップに参加させていただいたのですが、私はこれまで視覚障害者とも聴覚障害者とも関わったことがなく、話すのもはじめてだったんです。

オンラインのワークショップでは当事者の方と、zoomのマイクやビデオをオフにして対話するのですが、チャットを使ったり、紙に絵を描いて見せたり、ジェスチャーをしたり、コミュニケーションに色んな方法があることに驚きましたし、面白かったですね。

ドラマ「恋です!〜ヤンキー君と白杖ガール〜」が話題になっていますが、TVで見ることや自分が想像していたことと、目の前の当事者の方から聞くのではまったく違う体験でした。とてもインパクトがあったというか、少し野暮な言い方ですが視野が広がりました。

このインパクトは、「勝手な思い込みや偏見で差別してほしくない」というセクシャルマイノリティの当事者の言葉ともつながっています。これまで関わりのなかった障害当事者と接することで、そのことがより知覚されました。当事者から聞くからこそ分かるリアルの重要性を知ってもらうために、自分が感じたことをもっと発信していこう、と思うようになりました。

 

PLAYWORKSで印象に残っている活動や出来事は?

インクルーシブデザインワークショップで出会った視覚障害者の中に、声優をされている方がいました。目の見えない方の仕事というと、鍼灸くらいしかイメージがなかったので驚きましたし、自分の声という武器を活かしてやりたいことができるのはすごいことだなと思いました。

また聴覚障害者で、ベースを演奏されるという方がいました。ベースはリズム楽器だから、振動で分かると学校の先生に言われて始めたそうなのですが、私も昔ドラムをやっていたので、障害の壁を超えて共感できたのがうれしかったです。

何度ワークショップを体験しても、参加する人が違えば見え方、聞こえ方、特性や困っていることも一人ひとり違う。いつも新しい発見があって、勉強になるし、面白くて飽きませんね。

 

学業と就活とインターン、どう時間を使い分けているのですか?

実はタイムマネジメントは得意ではないんです、いつもギリギリでエンジンがかかるタイプなので(笑)。

長時間のオンラインワークショップで、ほぼ一日PCの前にいたりする時は身体は疲れますが、インターンの活動は強制ではありませんし、自分の関心のあるものを、タイミングにあわせて選ばせてもらえるので、大変さは感じませんでした。

 

PLAYWORKSでのインターンは、就職にどういった影響を与えましたか?

来年春から、東京の情報通信関係の会社のアクセシビリティ担当として、働くことが決まっています。

アクセシビリティ(Accessibility)は「近づきやすさ」、「利用のしやすさ」、「便利さ」を意味し、高齢者や障害をもつ方も情報通信機器やサービスを利用しやすくするようにする役割があります。それに、アクセシビリティを改善することで健常者もより利用しやすくなるというメリットがあるんです。例えば、動画に字幕がついているだけで、音を出せない場面でも動画の内容を理解できる、というように。

もともとデザイナー職で就活をしてきたのですが、採用していただいた会社の説明会でアクセシビリティコンサルタントという仕事があることを初めて知って、自分の意志を活かせるのはこれだ!と思いました。面接でも、私がセクシャルマイノリティ当事者や障害のある方たちとの関わりを通じて感じてきたことに共感していただけて、とてもうれしかったです。今から仕事をするのが、楽しみです。

 

PLAYWORKSでこれからやってみたいことは?

現在、PLAYWORKSのインターン生は6名いるのですが、全国や海外からオンラインで活動しています。直接会うこともままならないので、卒業までにもっと横のつながりを作れたらなあと思います。

実は11月30日にインターン主催で、インクルーシブデザインを実践・研究されている 九州大学 平井教授と、PLAYWORKS代表のタキザワさんのお2人に、インクルーシブデザインについてリアルなお話を伺うイベントを開催します。インクルーシブデザインがこれからの社会やビジネスにどう活かされていくのか? どんな課題があるのか? みんなでシェアする機会にしたいと思っています。

 

これから個人的にやっていきたいのはどんなこと?

来年から仕事として始めるアクセシビリティは、日本企業のすべてが進んで取り組んでいるわけではないことを知りました。

インクルーシブデザインは、一言でいえば「誰も取り残さない」、それは皆にとって利益があるということ。私は平和主義なので、この考え方によって悲しい思いをする人が減って、誰もが暮らしやすい社会にできる、ということに希望を感じています。

自分自身、マイノリティであるという意識があるので、偏見で語られたり差別されることがなくなるよう、まずは「知ってもらうこと」にこれからも取り組んでいきたいと思います。

 

未来のPLAYWORKSインターン生に対してメッセージをどうぞ

正直、PLAYWORKSでインターンを経験させてもらわなかったら、今の就職先にも出会わなかったので、すごくいい縁をいただいたと感謝しています。

PLAYWORKSは普段知り合えない方たちと出会えて、自分から関わるほど新しい世界が見えてくる場所です。自分の知らない、見たことのない世界を知ることに楽しさを感じられる人なら、まだインクルーシブデザインに興味がなくても、きっと面白いと思える発見があると思います!

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