INCLUSIVE DESIGN Talk|ちがう、を価値に変える。

インクルーシブデザイントーク 3 ちがう、を価値に変える

INCLUSIVE DESIGN Talk #03:ちがう、を価値に変える。
日時:2021年3月24日 20:00~21:00
ゲスト:veernca 合同会社 阿部菜々子・三冨敬太・安藤昭太
聞き手:PLAYWORKS タキザワケイタ

トークは「UDトーク」にてWEB公開されました。また、本記事は「UDトーク」のログをもとに作成されています。

 

 

みんなで真っ白な方向へ

タキザワケイタ(以下、タキザワ):インクルーシブデザイナーの PLAYWORKS タキザワです。Clubhouseにてインクルーシブデザインを語る「INCLUSIVE DESIGN Talk」。今回も「UDトーク」をWeb公開し、リアルタイムで字幕配信していきます。そして、第3回はゲストにveernca(ヴィアンカ)の阿部さん、安藤さん、三冨さんをお招きして「ちがう、を価値に変える。」をテーマにお話していきたいと思います。では、veerncaの紹介からお願いします。

三冨敬太(以下、三冨): はい、メンバーが在籍していた大学院の授業でワークショップの設計をして、そのワークショップに価値を感じたことで、さまざまな対象向けに展開していきたいと考えたのが設立のきっかけです。会社の特徴としては、佐藤尋宣さんという視覚障害当事者の方がいらっしゃるなど、障害を越えたメンバーで設立しています。なのでデザインするワークショップやソリューションも、障害がある人ない人、それぞれの視点を活かしてつくっています。veerncaという社名については、阿部さんお願いします。

阿部菜々子(以下、阿部):はい、 阿部といいます。普段はコピーライターとしてCMのナレーションや広告のキャッチコピーを書いたりする仕事をしています。veernca(ヴィアンカ)という社名は、意味としては“veer”が「方向転換」で、“ヴィアンカ”がイタリア語で「真っ白」っていう意味でして、障害に対する偏見を方向転換させ、思い込みのない、真っ白な方向にみんなで向かって行けたらいいなっていう想いで、ちょっと読み方が難しいんですけどveernca(ヴィアンカ)と名付けました。 

タキザワ:「真っ白な方向」っていいですね! では、大学院に在籍していたメンバーがveerncaをつくられたということですか?

三冨: そうですね。私たちが在籍していた慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科は、新卒の学生もいるし社会人学生もいて1学年トータルで70名ぐらい、平均年齢はおそらく30代後半から40代前半程度です。そこにいる人たちが面白くて、政治家やお医者さん、ビジネスマン、自治体の方もいてダイバーシティ非常にが高い学校なんですね。その中で「イノベーティブワークショップデザイン論」というワークショップを設計する授業で、社会課題をテーマにした課題があったんです。そこで、もともと友人だった佐藤ひろさんと小針丈幸さんという学外のメンバーと、学内の阿部さん佐藤優介さんでワークショップを実施しました。その反応が良かったので、これはもう会社としてやっていこうという流れになった次第ですね。

タキザワ:それは思い切りましたね! その時はどんなワークショップをやられたんですか? 

三冨: 視覚障害者と晴眼者が一緒に対話を通じて「どういう働き方をしていくのが良いか?」について考えるワークショップでした。トータルで3〜4時間ぐらい、ワークショップを設計する段階で学校の教員の方々から、「本当に視覚障害者を招いて一緒にやって大丈夫なのか?」ということを心配されたんですが、やってみたらすごくいい内容になりました。開始したタイミングはお互い気を使ってコミュニケーションを取っていたんですけど、対話をした後やワークショップが終わった後は友人みたいに「一緒にトイレ行こっか」みたいな対等な関係性が築けたというのと、参加者の方々がみんな「すごい楽しかったです」といってくれて、これはもっとやっていくべきなのかなと思いました。

タキザワ:視覚障害者の佐藤ヒロさんとは、もともとお知り合いだったのですね。

三冨: そうですね、ヒロさんはファンキーなドラマーで(笑)

タキザワ:ナイスですね(笑) 小針さんはPLAYERSでやっている「視覚障害者からの問いかけ」のワークショップに参加してくれていましたね。

三冨:そうだったんですね。 その後、みんなで話して物を作っていくプロセス自体が面白いんじゃないかということで、そのプロセスを「Valuable Design Process」として体系化しました。それを使って新しいコンセプトを作りはじめ、コンセプトを形にする際にデジタルの知見が必要になったのですが、メンバーにプログラミングが得意なメンバーがいなかったこともあり、誰かいないかと探してた時に安藤さんと知り合いました。

安藤昭太(以下、安藤):私はもともとはNoCodeっていうプログラミングをせずにプロトタイプを作るコミュニティに参加していました。そこに三冨さんが今回のプロトタイプについて投稿してたのを、僕が返信したのがきっかけだったと思います。

タキザワ:そういう出会いだったのですね! veerncaを立ち上げたのはいつ頃ですか?

阿部:1年ちょっと前の2020年1月です。

タキザワ:ではコロナ前ですね。1年ちょいでここまでアウトプットされていて、すごいですね。現在のメンバーは何名ですか?

三冨: メインが9人でプロジェクトに応じて関わる方もいたりするので、だいたい10人前後ですね。

タキザワ:リーダーはいるんですか?

三冨:リーダーは廃止してます。ノーリーダーのスタイルで(笑)

タキザワ:ノーリーダー(笑)リーダーを置かずに、どのようにマネージメントしているのですか?

三冨: 役割分担はあると思っていて、阿部さんがコピーライティングとコンセプトメイキング、安藤さんがエンジニアリング全体、小針さんはNPOや福祉との繋がり、ヒロさんは視覚障害当事者の視点で根本を問う質問をしてくれます。

タキザワ:すごくバランスの良いチームですね!

三冨:あとは、佐藤優介さんは研究者なのでアカデミック視点や英語、藤井賢二さんはアートディレクターとして全体のクリエイティブディレクション、山田悠平さんは精神障害の当事者ですが、ご自身でワークショップもやってます。松村さんは視覚障害当事者でダイアログ・イン・ザ・ダークの副代表もやられていた方、最後に私は雑用として、メンバーがやりのこした領域をやっています(笑)

タキザワ:最強のチームって感じですね。逆にもうちょっとこういう人材欲しいな、みたいなのってあったりしますか?

阿部:新しいメンバーにはどんどん入って欲しくて。漫画のワンピースみたいに船に人を乗せていく感じです。強みは各々違うけど、障害っていうのを「かわいそうなもの」とか「助けなきゃいけないもの」ってことじゃなく、もっと活かしたりポジティブに捉えれる方がいればメンバーに入っていただけたら嬉しいなって思いますね。

タキザワ:うんうん、いいですね。みんなが乗ったその船で、真っ白な方向を目指して進んでいくわけですね。

阿部:そうですね。でも私自身もすごい変わったんですよ。最初は視覚障害者の人と喋ったことがない時にワークショップをやることになって、どうやったら視覚障害者の人を助けられるかなってずっと考えていたんですけど、初めて会った視覚障害者の方が「趣味が海外旅行でウユニ塩湖に行きました」「すごく綺麗だったんですよ」といってて。私たちは目で綺麗だって判断しますけど、目が見えない人の綺麗って肌とか音とか、その時の空気といったもので綺麗を感じるんだなと思って。今まですごく思い込みがあったことに気づいて、まっさらになった経験があったんですよね。 

タキザワ:素敵な体験ですね。本当、障害当事者からはこちらが教えてもらうこと、学ぶことしかないですよね。 

阿部:本当にそうですね。 

 

 

対等な対話から、ちがいに気づく

タキザワ:SXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)に出展されたサービスも、「Valuable Design」のプロセスに沿って形にしていったのですか?

阿部:SXSWという世界で一番大きい規模のテクノロジー&カルチャーの祭典がアメリカで行われていて、そこに視覚障害があることを強みとして生かしたアプリを2つ出展しました。1つが「moom」といいます。視覚障害者ってメモが取れないじゃないですか。それをどうやっているのかを聞いたら、頭の中に部屋を作って物を配置するみたいに情報を置いていると。人差し指にはハンバーグのメニュー、中指にはチーズのメニューが入ってるみたいな話を聞いて、すごく面白いなと思って。この記憶術は健常者の人たちにも活かせるんじゃないかと考えました。説明がちょっと難しいんですけど、例えば携帯を右耳の横に置いたら音楽情報があって、頭の上に置いたら名言情報があるみたいな、空間上に情報を置いていくアプリです。

タキザワ:それは面白そうですね!

阿部:もう1つが「heart」という音声SNSです。これも視覚障害者の人たちがTwitterやInstagramを楽しんでいて、インスタのストーリーや動画を見ると相手が見ている景色や気持ちを想像できて面白いという話から、音の写真みたいなものを作れたら面白いんじゃないかということなりました。チーム内で音の写真の送り合いをプロトタイプしてみたら、なかなか想像力が掻き立てられて面白い経験になったので、「音のインスタグラム」のようなアプリを作ってみました。

タキザワ:これらの発案のきっかけはワークショップですか?

三冨:ワークショップの打ち合せをしていた時に、僕はパワポ野郎なので、すぐパワポを作りたがる。無駄に長い資料を作っちゃうんですが、それをバーンと出した時にヒロさんが「すごい頑張ってつくってるけどそんな意味ないんじゃない?」みたいなツッコミをしてくれて(笑) ヒロさんはいろんな情報が出た時に取捨選択をするんですよね。これは絶対に覚えておくもの、その他は全部捨てる。情報の断捨離がすごくうまくて、私は全部Evernoteに突っ込んておいて結局は見ない、みたいなことが多いんですけど、その情報管理の違いが面白かったのが、「moom」が生まれるきっかけですね。

タキザワ:「heart」についてはどうですか?

三冨:情報の取り扱いについてveerncaメンバーの上田たかこさんという視覚障害をお持ちの方と話をしている時「インスタも使ってます」といっていて、どうやって使うのか聞いてみたらカメラの機能を使っていると。であれば僕らの中で一番楽しめるSNSってどんなものかを試してみよう!っていう流れで作り始めました。最初に何かしら物作りをすることを決めて、テーマは「情報」。そして対話を重ねる中で気づきを抽出し、コンセプトをデザインしていった流れです。 

タキザワ:興味深いのが障害当事者と一緒に共創すると、どうしても現状の課題や悩みを解決しようとしちゃうじゃないですか。でも今回は情報の扱いや楽しみ方っていう観点から、新たなサービスが発案されているのが面白いなと思いました。

三冨:そこの指摘めちゃくちゃ嬉しいです(笑) まさにそこが「Valuable Design」の肝かなと思っています。インクルーシブデザインは人間中心デザインの方法論をベースに構築されていると僕は認識していて、観察をして問題を定義し、アイデア創出してプロトタイピング&テスト、という文脈に則ると思うんですよね。ただ、一番最初の観察フェーズを経ることによって見る側、見られる側という非対称の関係が生まれてしまう。だから見られた側の課題が浮き彫りになり、それを解決しようとなる。我々はそうではなくて、観察の代わりに対話をすることでお互いの違いに気づき、それが価値になる。インクルーシブデザインの観察の部分を対話に置き換えて再構築したものを「Valuable Design Process」として提示できるんじゃないかと考えています。 

タキザワ:対話というのは視覚障害が対象だったからというのはありますか? 聴覚障害が対象であれば、聴覚障害者が健聴者を観察するというやり方もあるのかなと思ったんですね。あとは、晴眼者が視覚障害について対話しているのを視覚障害者が聞いて、それに対してフィードバックするみたいな。

三冨:それは面白いですね! 面白いと思うとともにveerncaとしては対話による対称性が大事だと思っています。人類学者の中沢新一さんが「対称性人類学」という本を出していて、テロや狂牛病など世の中のあらゆる問題は関係性が非対称になってしまうから生まれる。物事の関係はあらゆる面において対称的であるべきだと述べていて、個人的にはそれに共感を抱いていることもあり、すべての関係性は対称的に進めていく。聴覚障害の方と聞こえる人のコミニケーションにおいて、どちらかがどちらを観察するのではなくて相互にやりとりできる状態が、veerncaとしてはいいなと思っています。

タキザワ:そもそも今の社会は障害者と健常者は平等ではないので、その状態から対称な関係性をつくっていくプロセスのデザインが肝になると思いますが、何か工夫はあったりしますか?

三冨:対話の中にも共創型の対話っていうものがありまして、それは1つの結論に至ることを目的とするのではなく、対話している人たちが思考を深めたり、広げたり、その過程でそれぞれの関係性が創造的になり、自己変革や成長を遂げる対話が共創型の対話です。さっきの例でいうと、情報の取り扱い方に関して自分の思考を深めて広げることが、対話しているメンバーの良い関係作りなのかなと思います。

 

  

SXSWには3つ出したかった…

タキザワ:SXSWに2作品を出すのがすごいなと思ったんですね。どういう経緯で2つ出すことになったんですか?

三冨:本当は3つ出したかったんですよ(笑)

タキザワ:欲張りですね(笑)

三冨: そう、欲張りなんですよ(笑)というのも私がプロトタイピングを研究の対象にしていて、研究の中で「パラレルプロトタイピング」というものがあるんですね。「並行プロトタイピング」ともいって、その反対が「直列プロトタイピング」です。1つのものを何回も繰り返すのが直列プロトタイピングで、パラレルプロトタイピングはコンセプトABCがあったら、それを並行してやる。パラレルと直列でいうと、パラレルの方が良い結果が生まれるというのが定量的に示されていて、できれば3つのコンセプトを出してそのフィードバックを踏まえて1個にしていくというプロセスをやりたかったんです。

タキザワ:確かにそれは理想ですね! ちなみにもう一案はあったんですか?

阿部:いっぱいやりたいことがあったんですよね。それこそ人事に役立つような、働き方に特化したサービスとか色々あったんですけど。今回SXSWに出展していろんなフィードバックをもらったので、もしかしたら全然違う形で皆さんに使ってもらえる日が来るかもしれないです。

タキザワ:それは楽しみですね! でも、2つ作るだけでも十分すごいと思うんですけど、進めていく上で良かったことや難しかったことはありますか?

安藤:作る難しさはありますよね(笑) 僕が12月に入ったタイミングでは3つ作るっていう話がありました。それぞれの技術的な難易度が高くて、お金かければできるけどプロトタイプでどれくらいできるか、みたいな難しさはありましたね。一方でメリットとしては、そういう中でも実現する方法を知れたっていうエンジニア的な視点もそうですし、SXSWでもらったフィードバックの内容を見ると、どちらか一方がすごい刺さるみたいなことが結構あったので、それは2つ出したメリットなのかなと感じました。 

三冨:私も安藤さんと同意で、学習が多面的に行われるがいいなと思っています。音のSNS「heart」でいうと、音って日常的に接してはいるけれども、意識的に「こんな音が流れてる」ということに気づけたりする。例えばメンバーが出勤する時のカンカンカンっていう音や、帰り際に寄ったスーパーの音とか、休んでいる時のNetflixの起動音とか… そういう音だけを聞くと癒されたり、素敵だな思う。そういう事ってしっかり作っていかないと気づけないことだと思うので、いろいろ学習できたことは良かったですね。

阿部:私達のアプローチはデザイン思考を起点にしていますが、デザイン思考の研究で面白いものがあります。多様な人が集まった場合と、頭のいい専門性の高い人だけが集まった場合で、どっちが新規性が高いアイデアを生み出せるか?という実験で、平均的なアイデアは専門性の高い人たちがどんどん産み出すんですけど、多様性の高いチームは、すごく駄目なものか、すごくイノベーティブなものかのどちらかを生み出すという結果でした。今回はまだ立ち上げて1年の会社ということもあって実験的に作ったアイデアではありましたが、バラバラの多様性のある人たちが集まって作ったアイデアが新規性があるかを確かめるためにSWSXに出展したら評判が良かったので、そこを確認できたのはよかったですね。 

タキザワ:SXSWに出すというのは、どのタイミングで決めたんですか?

阿部:veerncaを立ち上げの時点から見据えてましたね。

タキザワ:それは視座が高くて良いですね!その時はオンライン開催になるとかまだ決まってない状況でしたよね?

阿部:そうですね。開催されることとスタートアップコーナーがあるという話を聞いて、 三冨さんが急いでバーって出してくれた感じでしたよね(笑)

タキザワ:本業をやりながらプラスアルファなので、かなりタフだったと思いますが、SXSWはモチベーションになるし、マイルストーンを決めて世に出していくってのは大事ですよね。

阿部:やっぱり締め切りがあると頑張れますからね(笑) 

 

 

moom と heart

タキザワ:「moom」「heart」というネーミングが面白いなと思ったんですけど、どうやって決めたんですか?

阿部:よくぞ聞いていただきありがとうございます(笑) moomはすごい簡単で、仮想のメモ空間を作るっていうことで、“memo room”を略して“moom”。にしました。

タキザワ:なるほど!ロゴマークは羊っぽいですね。

阿部:羊っていっぱい紙を食べるじゃないですか。 情報いっぱい溜め込んでくれるっていうモチーフです。 heartは「耳で聞くことで相手の心を想像できる」っていうようなコンセプトなんですけど、“heart”の英語のつづりの中に「心」を意味する“heart”もあるし、「耳」を意味する“ear”も入ってるし、「聞く」を意味する“hear”も入っているので、キャッチコピーで“Hear heart in your ear”とまとめました。 

タキザワ:さすがコピーライター!

阿部:恐縮です(笑)

タキザワ:でもネーミングとかデザインとかクリエイティブって、めちゃめちゃ大事ですよね。特に障害者支援系のサービスやプロダクトってせっかく良いものをつくっても、それがちゃんと伝わらないということも多いと思うんで。 SXSWではどんなフィードバックがありましたか?

三冨: アンケートに答えてもらう形でフィードバックをもらい、結果としては25件ぐらいにとどまってしまったんですけれども、「moom」「heart」ともにアイデアの新規性はすごく高かったです。moomに新規性を感じると答えてくれた人は98%ぐらい。反面、ニーズに合ってると思うと答えた人は30%程度。やっぱり本デザインプロセスの限界というか、新規性は高まるけれどもニーズが出てこないので、ニーズにフィットさせるのは別のアプローチが必要だと考えています。定性的なコメントとして興味深かったのは、moomを「記憶の宮殿」っていってくれた方がいて、調べてみると古代ギリシア時代に物を記憶する方法として自分の頭の中に小さな町を作って、「あそこの商店焦点はこの情報」みたいなことをやっていたらしいんですね。SXSWに参加されてる方はテクノロジーやカルチャーに造詣が深く、コメントがありがたかったですね。

タキザワ:安藤さん、阿部さんはいかがですか?

安藤:ハニーさんというバリ島で障害者の就労支援をしてるNPOの方から、そこで働くマネージャーが視覚障害で30人の部下を抱えていると。彼自身はToDoをポストイットに書いているらしいのですが、それもなかなか難しくていつもタスクがパンクして、部下があたふたする状態が定期的に起きるそうです。たまたまmoomを見てくれて、まさに必要なものはこれじゃないかと連絡をくれました。マネージャーの方からもこれがあると便利だよねってことで、ロードマップやリリースのタイミングなどを聞かれましたね。新規性がすごいあって、みんなが使うわけじゃないけど刺さる人には深く刺さる、というプロダクトなのかなと思いました。

タキザワ:新規性が高いモノってユーザーも使い方をすべてイメージできないので、使いながらニーズに気づいていくことが多いと思うので、今回のフィードバックをどう捉えて、どう活かしていくかが重要かなと思いますね。この2つのプロトタイプについて、今後の展望を教えてください。

三冨:やはりある程度のビジネスとしてマネタイズしたいなとに思っているので、今回のフィードバックを受けて4〜6月ぐらいの間に実際のサービスに落とし込むことを、具体的に詰めたいと思っています。ジャストアイデアで安藤さんが出してくれたのが、moomって自分の周りの360度に空間情報を配置できるので、有名なアーティストの頭の中の音楽配置やプレイリストを販売できないかなと。また、moomが自分の部屋のように情報を配置できるとしたら、誰かの部屋を覗き見するような欲求をつけたりできないかという話をしています。サービスが持っている価値をうまくニーズに合わせてアジャストしていき、マネタイズできるポイントを探していきたいなと思っています。

阿部:私はmoomやheartもそうなんですけど、これを開発したプロセスをどんどん広めていきたいという思いもあります。このサービスを作った時に、私の友達が「目が見えない人ってすごいね」っていってたんですよ、「こんな記憶の仕方するなんて全然想像もつかなかったよ」っていう話をされて。これまでって「目が見えないってかわいそうだね」っていわれてきたはずなのに、まさに違うが価値に変わった瞬間だなって思ったんですよね。今回は「Valuable Design Process」っていうものに則って2つのサービスを作ったんですけど、このプロセスをいろんなチームで用いてもらえたら、まさに「ちがうを価値に変える」っていうことがいろんな所で起こり得ると思っていて、このプロセスを広めていきたいなというのは一つの展望です。

タキザワ:この2つのアプリはノーコードで作っているんですよね?

安藤:そうです。全部ノーコードで作りました。常々「ノーコードサイコー」だと思ってるんですけど、今回も思っちゃいましたね(笑)

タキザワ:でも本当に1年でアプリを2つ作るって、ノーコードだから実現できたことですよね。

安藤:そうですね。本当はギリギリまでめちゃくちゃで大変でしたけど… 僕が12月にエンジニアとして入ったタイミングではこれまでのプロセスもよく知らないので、三冨さんや阿部さんが何をいってるかよくわからない状態だったのですが、藤井さんがコンセプトムービーを作ってくれたのが、コンセプトからエンジニアリングのブリッジになりました。最初はスマホのセンサーなどいろんな技術の要素があったんですが、いろんな人に聞く中で最終的にARになりました。ARって視覚情報なので視覚障害とは逆の技術なんだけど、コンセプトムービーを見てそれを応用すればいいっていう気づきがありました。

タキザワ:それはめちゃめちゃ面白いですね! 最初の概念レベルのアイデアが、コンセプトムービーによって行動や体験価値に具現化されたわけですね。でも、そのムービーをつくれちゃう藤井さんがスゴイですね!

三冨・阿部: うん、すごいです。 

タキザワ:アイデアを形にするためにエンジニア向けに仕様書に落とすと、もともとのコンセプトや実現したいことがうまく伝わりきらないことが起きがちですが、コンセプトムービーによってブリッジしていくプロセスはすごく興味深く、改めて詳しく伺いたいです。

まだまだ話し足りないのですが時間になってしまいました。今後も何かご一緒できたら嬉しいです。veerncaのお3方、どうもありがとうございました!

三冨・阿部・安藤:ありがとうございました!

 

 

veernca合同会社

veernca ヴィアンカは、「ちがう」を価値に変え、あたらしい働き方をデザインする会社です。障害に対する先入観や思いこみの壁を、ひらめきあるアイデアで突破します。

https://veernca.co.jp/

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