PLAYWORKS INTERN INTERVIEW 05|藤井香菜子
PLAYWORKSのインターンは、クライアントワークやプロジェクトに関わる中で、インクルーシブデザイン・サービスデザイン・ワークショップデザインについて学んでいます。今回は2022年8月からインターンとして活動している、藤井香菜子のインタビューをお送りします!
藤井香菜子 FUJII KANAKO
金沢美術工芸大学 デザイン科 製品デザイン専攻 大学院2年
金沢在住。人々の生活を便利で豊かにするものを作りたいという夢を持って、家具や家電などの生活に身近なプロダクトのデザインについて学んでいる。趣味は、深夜バスで東京に行き、最新の情報やプロダクトに触れたり、美術館に訪れたりすること。流行が集まる街で新しい学びを得ることで、経験値を増やし、視野を広げることを楽しんでいる。
左上:藤井香菜子 右上:PLAYWORKS タキザワケイタ / 左下:インタビュアー 目次ほたる 右下:大崎博之
まずは藤井さんのことを簡単に教えてください
金沢美術工芸大学のデザイン学科 製品デザイン専攻に所属し、家具や家電、文具など生活に密接に関わる製品のデザインについて学んでいます。私は幼いころから、絵や工作が大好きで、いつか自分の好きなことを人の役に立てる仕事に昇華させたいと思っていました。そこで大学では最初、グラフィックデザイナーを志すことにしました。でも、進路について具体的に考えるうちに「人が使いやすく心地よいと思う形を考え、生活を豊かにするあり方を考えるものづくり」に携わりたいという気持ちが芽生えました。そんな心情の変化を機に、製品デザインの道を選ぶことを決めました。
大学院に入ってからは、企業と一緒にものづくりをする機会に恵まれました。現在は福祉系のプロダクトデザインのお手伝いをしたり、地元である金沢の企業と一緒に商品開発をするプロジェクトにも参加させてもらっています。学部時代から、新しいチャレンジができる機会があれば迷わず飛び込むと決めていたことが、今になって実を結んでいるように感じています。
卒業制作では、金沢の企業と一緒に「マインドフルネス」をテーマにした、新しい書道道具をデザインしました。場合によりますが、書道は「手間がかかる」「古い」「難しい」といったネガティブな印象を与えることがあります。それをポジティブなものに変換するために、「手間を大事にする」「自分と向き合う」というマインドフルネスの発想を取り入れました。社会の中で見過ごされている価値を磨き、今の時代と相性がいい形に変換してお届けしたい。そんな私の想いが、このデザインの根底には流れています。
PLAYWORKSでインターンをはじめたきっかけは?
インクルーシブデザインに興味を持ったきっかけは、大学院で視覚障害のある方に関する研究に取り組んでいたときでした。研究のためにリサーチをしていたとき、「ユニバーサルデザイン」と「インクルーシブデザイン」2つのデザインの存在を知りました。それぞれを比較して考えたとき、ユニバーサルデザインは「より暮らしやすい社会を提供すること」に着目しているのに対し、インクルーシブデザインは「より暮らしやすい社会を、実際に困っている人と共に共創すること」に着目しているのだと気が付きました。デザインにおけるアプローチの違いを知り、私は障害などのハンデを抱える人々の感覚や価値観に重点を置いているインクルーシブデザインにとても興味を持ったんです。
私が学んでいる製品デザインの領域でも、福祉とデザインを組み合わせることで、新たな価値を生み出せるかもしれない。そこで、インクルーシブデザインについて学べる場所がないかと調べているときに見つけたのが、PLAYWORKSでした。インターンの募集を見て、迷わず応募しました。
PLAYWORKSでは具体的に何をしているのですか?
東京で開催されているワークショップのアシスタントや、リードユーザーさんのアテンドを行うことが多いです。2022年8月からインターン生として参加しているのですが、すでに9回ほど東京を訪れて、ワークショップのお手伝いをしています。また、私はカメラが趣味なので、ワークショップの様子を撮影したり、記録ムービーを作ったりする仕事も任せてもらっています。ファインダー越しにワークショップを見ると、参加者の方の表情や手の動きをより細かく観察できて面白いんです。大手企業とのプロジェクトなど、インクルーシブデザインの最前線の現場に立ち会えるのは、とてもいい経験になっています。
インターンと学業の両立のために、スケジュール管理には気をつけていますが、インターンでやっていることと大学院での研究テーマは共通する部分も多いので、どんな活動も学びになっていますね。とはいえ、体力的には疲れることもあるので、あくまでも無理はせずに、休息をしっかりとって活動するようにしています。
PLAYWORKSで印象に残っている活動や出来事は?
特に印象に残っているのは、2022年3月に開催された「FRAGRANCE DIALOGUE ワークショップ」で、体験レポートの執筆と写真撮影を担当したことです。実施した内容は、視覚に障害のあるリードユーザーさんと一緒に香りからインスピレーションを得て、言語化するというものでした。
ワークショップを通じて驚いたのは、視覚障害のリードユーザーさんは、晴眼者の私たちよりずっと香りを感じ取る力が強かったこと。普段から視覚情報がないぶん、香りを生活の情報源にしていると教えてくれました。「ここはパンの香りがするからパン屋さんで、もう数メートルで美容院がある」など、お店の位置も香りで把握していると聞いて、びっくりして! きっと、リードユーザーさんは香り以外の部分でも、さまざまな視覚情報に踊らされることなく、本質的なものが見えているんだなと感じました。
何でもネットで知れる時代だからこそ、私は「百聞は一見にしかず」ならぬ、「百聞は一体験にしかず」をモットーにして、普段から五感を通した体験をするように心がけています。
レポート執筆と撮影を担当したワークショップ
インターンを通して得られたことは何ですか?
目の前で困っている障害のある方をどう助けたらいいかわかるようになったのは、大きな変化でした。私は身近に障害のある方がいなかったので、障害に対して知識や経験もなく、「助けてあげたいけど、迷惑かもしれない」という不安な気持ちでいっぱいだったんです。でもインターンを通じて、リードユーザーさんとコミュニケーションを取ったり、アテンドする機会をもらえたおかげで、具体的な助け方を知ることができました。
視覚に障害のある方には、「何かお手伝いできることありますか」とお声掛けすればいいし、エレベーターや狭い通路であっても、その場面に合わせて自分で考えてご案内するなど、行動できるようになり、自分にもできることがあるのだと自信に繋がりました。
そしてもう1つ。「目が見えなかったり、耳が聞こえないからといって何もできないわけじゃない」ということに改めて気づくことができました。自分の中にあった障害に対するバイアスを少しずつ外せたことで、製品デザインにも新たな目線で向き合うことができ、就職活動にも活かすことができました。
PLAYWORKSのインターンで経験したことを糧に、来年の春からは大手カメラメーカーでデザイナーとして働くことが決まっています。実際にリードユーザーさんと一緒にプロダクトについて考える経験があったおかげで、デザインによる課題解決のイメージもしやすく、採用面接での受け答えにも役立てることができました。
PLAYWORKSはどんな会社ですか?
「成長するチャンス」を与えてくれる会社だと思います。私は大学で福祉について学ぶ機会はありましたが、コロナ禍での配慮で実際に障害のある当事者の方とコミュニケーションを取る機会はなく、満足する学びを得られていない感覚があったんです。そんな中、PLAYWORAKSに入って、リードユーザーさんたちと出会えたことで、自分の価値観や視野が一気に広がりました。ワークショップなどリアルな場に参加して、実体験をもとにインクルーシブデザインを学べるインターン先は限られているので、貴重な環境だと感じています。
PLAYWORKSのプロジェクトからは、リードユーザーさんや企業の方々を巻き込んで、面白いものを一緒に作ろうという想いが伝わってきます。関わる人々全員がワクワクしながら楽しんで活動できているのが、本当に素敵だと思います!
これから挑戦したいことは何ですか?
PLAYWORKSでのインターンを通じて、私は「世界中に豊かな体験を届けるプロダクトを作りたい」という気持ちが芽生えました。障害や個性、ひいては文化や言語に関わらず、誰もがストレスなく、ありのままで楽しめるプロダクトを作ることが夢です。就職先のカメラメーカーも、グローバルな領域でさまざまなプロダクトを展開する企業なので、その技術力や発信力を活かして、インクルーシブな領域でアプローチしていければと思っています。
未来のPLAYWORKSインターン生に対してメッセージをどうぞ!
福祉やインクルーシブデザインに興味がある方は、挑戦してみて損はない環境です! インターンへの応募という新しい1歩には勇気がいると思いますが、1度きりの人生なので、体力があってチャレンジできる学生のうちに経験を増やしてみてほしいと思います。私自身、PLAYWORKSに飛び込んでたくさんの学びを得たので、ぜひ思い切って挑戦してみてください!
INTERN INTERVIEW 04|向井 貴美
https://playworks-inclusivedesign.com/column/2022-10-28/