PLAYWORKS INTERN INTERVIEW 08|山田和佳

PLAYWORKS インターンインタビュー8 山田和佳 多様な世界に、飛び込み見続けたい。

PLAYWORKSのインターンは、クライアントワークやプロジェクトに関わる中で、インクルーシブデザイン・サービスデザイン・ワークショップデザインについて学んでいます。今回は2022年10月からインターンとして活動している、山田和佳のインタビューをお送りします!

山田和佳  YAMADA WAKA

九州大学院芸術工学府 芸術工学専攻 未来共生デザインコース 修士2年
関西出身、九州在住。学部時代は人間工学とプロダクトデザインを学び、大学院では日本の婚姻制度についての情報デザインについて研究を進めている。「入学当初の外国人親子と担任をつなぐ連絡帳」のデザインを手がけ、2023年度グッドデザイン・ニューホープ賞に入選。旅行が好きで、国内外を問わず色々な景色、世界観に触れることを大切にしている。

Zoomでのインタビューの様子。左に山田、右にインタビュアーの大崎さんが並んでいる。

左:山田和佳 右:インタビュアー  大崎博之

 

まずは山田さんのことを簡単に教えてください

現在は、九州大学大学院の未来共生デザインコースに通っています。研究テーマは情報デザインで、特に婚姻制度についての理解と議論のためのデザインを探求しています。学部生時代にお世話になった教授が、パートナーシップ制度に関するプロジェクトを手がけていたことがきっかけで興味を持ちました。
私もプロジェクトに携わったことで、その中で障害を持つ人々や社会的なマイノリティに焦点を当てたデザインに関心を抱くようになった、という経緯があります。

婚姻制度をテーマにした展示会会場の写真。白い空間に、黄色いデザインのパネルが貼られ、展示台には様々な形の瓶が並べられている。
さまざまな形の瓶に一つづつ、「年金」「医療・健康」「財産」などと書かれた黄色いラベルが貼られている。

婚姻制度についての権利や選択肢を、買い物のように検討・選択できる展示会
 
学部生の頃は「入学当初の外国人親子と担任をつなぐ連絡帳」のデザインに取り組んでいました。お子さんがまだ学校に慣れていない時期で、しかも言語が違うとコミュニケーションにも苦労をしますよね。そこで既存の連絡帳のデザインを外国人の親子に寄り添うものにして、一歩目のやりとりをスムーズにしました。ありがたいことにこのプロダクトで、グッドデザイン・ニューホープ賞に入賞しました。

テーブルに広げられた連絡帳に、子供が鉛筆で記入している。

外国人の児童と保護者、そして担任の交流をサポートする連絡帳をデザインした

 

婚姻制度に関する研究と入学当初の外国人親子と担任をつなぐ連絡帳、この2つに共通するのは情報のデザインによって、人と人との関係性やコミュニケーションの仕方が変わる点です。こうした変化は個人的にとても興味深いなと思っていて、さまざまな分野のケースに触れるようにしていました。
また、研究を進める上で心がけていたのは現地に足を運ぶことです。連絡帳のプロジェクトでは外国人の保護者や学校の先生の当事者にインタビューを行いました。研究の初期段階では地域住民と外国人コミュニティーに飛び込むために、地域のモスクや外国人オーナーが経営する食料雑貨店に飛び込みヒアリングも行いました。婚姻制度について調べた時は、九州レインボープライドなど当事者団体のイベントに参画・観察をしました。
そのほかに打ち込んできたのは、サークル活動と旅行です。サークルではインスタレーションという空間芸術の作品を制作していました。学生の力だけで照明や美術や音効など様々な要素を組み合わせて作り上げることに尽力していました。
旅行では様々な国や地域を巡り、民主主義についての展示を子ども向けに公開している美術館など、少しユニークな場所にも足を運んでいます。自分の研究にも活かせますし、何より日本では見られない光景から学ぶことができる。多様な場所に足を運び、自分の目で確かめ、考えることは、私が大切にしているポリシーでもあります。

 

PLAYWORKSでインターンをはじめたきっかけは?

インターンを始めたきっかけは、SNSで募集を見かけたことです。当時は就職活動中で、色々な企業のインターンには参加していたものの、どれも選考の一環だったこともあり実務に携わることはありませんでした。私は大学の講義だけでは得られない情報や取り組み、人、景色に触れ、外の世界を知りたいと思っていました。
そのため、PLAYWORKSでインターン生を募集していると知った時は、絶対に参加したいと思い、すぐに応募をしました。魅力的だったのはやはり実務に携われることと、遠隔(リモート)でオンライン参加できる点でした。首都圏から離れた場所ではインクルーシブデザインの現場に携われる機会は中々なかったので、PLAYWORKSのインターンとして新しい世界に飛び込むことができたのはとても嬉しかったです。
 

PLAYWORKSでは具体的に何をしているのですか?

私がインターン活動として取り組んできたのは、ワークショップやイベントのお手伝い。そしてYouTubeの動画編集です。
現地でサポートしたお仕事のなかで強く記憶に残っているのは、家電メーカーとのインクルーシブデザインプロジェクトで実施した、聴覚障害のある方と楽器を作るワークショップです。初対面の障害当事者と企業のデザイナーたちが実際に楽器を手に取って活発に意見交換をしたり、情報保障も充実しており誰も取り残されないよう工夫されている点が非常に興味深かったです。タキザワさんは綿密に企画やワークショップを練り、短い時間でも最大限のクリエイティビティが発揮されるよう準備をされているので、そうした現場に立ち合えることは本当に勉強になります。
動画編集では方角の方山さんコワードローブの前田さんのインタビューを担当しました。コンテンツ制作の立ち上げにも携われたので、企業広報の大切さも学ぶことができたと感じています。ゲストにどのような質問をするかについても、ほかのインターン生と議論を重ねたのを良い経験でした。
また、博多大丸さんとの共催で実現した展示会『インクルーシブデザインでつながる未来』では、来場された方に向けてプロダクトの解説を行う説明員もやらせてもらいました。
障害当事者の方の他にもインクルーシブデザインに馴染みがない方に説明することも多く、多様な意見に触れたことで刺激を受けました。商品を開発された方から熱い想いを伺うこともでき、作り手やユーザーの双方とインクルーシブデザインを起点に交流できる貴重な体験でした。

山田さんが身振り手振りを使って展示品を説明している。

 

PLAYWORKSで印象に残っている活動や出来事は?

YouTubeコンテンツの制作では、実際にタキザワさんとゲストの対談を拝聴する機会があるのですが、その内容が強く印象に残っています。方山さんや前田さんも、インクルーシブデザインの話だけでなく、ビジネスの話も積極的にされるんですね。
障害者向けの取り組みは、やってること自体に意味や意義があると思われがちですが、実際は経営者としてビジネスを回していく必要があります。当たり前に感じるかもしれませんが、学生の私からするとそれはとても興味深いものでした。また、自分の人生をかけて社会課題を解決しようとされている方の声を、生で聞けるのは大きなモチベーションにもなっています。
ほかにも、牛乳石鹸さんとのワークショップも印象的でした。オンラインで視覚障害のあるリードユーザーの方々が参加したのですが、そこでのタキザワさんのファシリテーションが本当に素晴らしくて。事前にリードーユーザーに製品を送って使ってもらったり、Zoom画面越しに洗面所や浴室を観察したり、クラウドのツールでリアルタイムにアイデアを書き込んでいったり、リアルとデジタルとの併用がとても勉強になりました。

 

インターンを通して得られたことは何ですか?

実行と継続の大切さを学べたと思っています。タキザワさんがこれまでに実践してきたことや知見の蓄積が、ワークショップやインクルーシブデザインに積み上がっているような気がしていて。意思をもってトライアンドエラーを続けることの大切さは、インターンを通して繰り返し学んできました。
それまでの私は、インクルーシブデザインという魔法を使えば、イノベーションが生まれてみんながハッピーになるという、楽観的で漠然としたイメージしかなかったんです。インターンでの活動を通してリアルを知れたことで、大学で学ぶこと以上のものが得られたと思っています。経営者がどのように課題を見つけ、アイデアやプロトタイプを作り、検証を繰り返して、プロダクトやサービスを世に出しているのか。こうした一連の流れを現場で見れたのは本当に良かったです。

 

PLAYWORKSはどんな会社ですか?

色々なところにたくさんの種をまいて、それを確実に形にする会社だと思います。プロジェクトはどれだけ準備したりそのデザインが洗練されていても、頓挫したり中々芽が出ないことも多いです。でもPLAYWORKSでは、まいている種の数が圧倒的に多いし、タキザワさん自身も積極的に動かれて魅力的なプロジェクトをつくっている。さらに言えば、それらの活動で得た芽をインターン生にも分けてくれているのだと思います。
インターン生にも全国のイベントに赴いたり、お手伝いをする機会がたくさんあります。これは地方の学生にとっても貴重な機会だと思います。

サイトワールドのブースで、たくさんの来場者に向けて展示品を説明している。

  

これから挑戦したいことは何ですか?

私はITメーカーのデザイナーとして内定をいただいていて、この春から働くことが決まっています。その仕事を通して、自分が気になっている社会課題、やりたいことを自主的に動かしていければと考えています。大学院で研究をしてきた婚姻制度についてのデザインも、就職先の企業の中で、何かほかの形に活かせれば嬉しいですね。
PLAYWORKSのインターンに参加していなければ学生の視点しか持てず、外の世界を知る機会もずっと後になっていたと思います。今まで参加させてもらったようなイベントが全国にあることを知らず、自分で何かに挑戦することもなかったかもしれない。それほどインターンでの学びは大きいものだったと思っています。今後はこれまでの経験を活かし、自分発のプロジェクトとして展開していきたいです。

 

未来のPLAYWORKSインターン生に対してメッセージをどうぞ!

この記事を読んでくれている読者で、「自分は障害のある方向けのデザインをやってこなかったので、インターンは難しいかも」と思っているとしたら、もったいないです。
私も自身の研究とインクルーシブデザインは少し異なるのですが、このインターンで学んだプロセスや考え方は非常に参考になりました。インクルーシブデザインにおける現場ならではのノウハウや、イノベーションの本質を体感できる貴重な機会ですので多様な学生に参加していただきたいです!
 
 

PLAYWORKS INTERN INTERVIEW 07|細谷耕太郎

PLAYWORKS インターンインタビュー7 細谷耕太郎 誰かのためのデザインを、自分の手で。

https://playworks-inclusivedesign.com/column/column-6646/
 

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